岸田内閣・自民党の支持率が急落し、本来なら野党第一党の立憲民主党に「政権交代」の機運が高まるはずだが、「泉健太総理」に現実味は感じられない。これでは自民党に真の危機感は生まれないし、立憲民主党の批判ばかりの体質も変わらない。この構図こそが、日本政治の閉塞感の本質ではないか。【全3回の第1回】
小沢一郎の“評価”は…
ぎょろ目の童顔に刈り上げヘア、会見の声はよく通る。泉健太・立憲民主党代表(49)だ。
国民は自民党政治に失望し、世論調査では、「野党中心の政権」への政権交代を望む声が高まっている。次の総選挙で政権交代が起きれば、野党第一党の代表である泉氏が首相に就任する可能性が高い。だが、どうしてもこの人物に総理大臣というイメージは湧かない。当の立憲民主党の議員たちも同じらしい。同党のベテラン議員が、最近、泉氏に面と向かってこう直言した。
「あなたが総理になるとは誰も思っていません。国民もあなたが総理になることを期待していないでしょう。それでも、なる時にはなる。そんなものです。だからその時のことをよく考えてください」
泉氏は真剣な顔で聞いていたという。
同党の長老やベテランからも不安の声が聞かれる。細川護熙政権、鳩山由紀夫政権で自民党から2度の政権奪取を果たした“政権交代の仕掛け人”小沢一郎氏も泉氏に物足りなさを感じているようだ。泉氏に近い若手議員が明かす。
「ある席で小沢先生に泉代表について聞いたところ、『泉くんはなぁ~』と言ったまま、その先をおっしゃらなかった」
ベテラン議員の1人、玄葉光一郎・元外相はBS番組で、政権交代が実現した場合に総理大臣には誰がふさわしいかについてこう言ってのけた。
「立憲民主党で言うと、総理と代表を分けるという考え方だって私はあっていいと思っています。今すぐ総理大臣と言えば、野田(佳彦・元首相)さんという声が出ているのは事実。野田さんが今一番、求められている」
党の代表は泉氏でも、首相には野田氏を据えるという「総理・代表分離論」だ。
内閣の失政で与党が選挙に敗れた時は、野党第一党の党首が代わって首相となる。それが「憲政の常道」と呼ばれる。当然、野党第一党の党首は、選挙に勝てば首相になることを前提に就任しているはずだ。
それなのに、国民の政権交代への期待が高まるなかで、党内から公然と「総理・代表分離」の声があがるというのは、泉氏はそんなに頼りない人物なのか。泉氏の政治経歴を辿ってみよう。