「推し」とは、人にすすめたいと思うほど好感を持っている相手を指し、「推薦する」が語源。いまや何らかの推し活を楽しんでいる人は約65%にものぼり[野村総合研究所(NRI)未来創発センターによる約3600人を対象に行った調査による]、空前の推し活ブームが到来したとされるが、このブームは、通常なら推される側である著名人にも波及している。あの有名人が“推し”に会ったら……そんな夢を叶える今回の企画は、「小学生の頃から五郎さまファン」と公言している歌手・藤あや子(63才)が、彼女の“推しメン”野口五郎(68才)と対談。1970年代アイドルの舞台裏から、共に芸能界で活躍するようになって辿り着いた歌手としての境地など、深イイ話120分をノーカットでお届けします。【全3回の第1回】
「今日はお世話になります!」。待ち合わせ時間よりも30分早く、対談場所に姿を見せた藤あや子。この5月に子宮体がんの手術をしてから1か月余りしかたっていない。われわれ取材班は彼女の体調が気になったが、顔色もよく元気な様子。ハリのある声と笑顔で、スタッフ一人ひとりにあいさつをしてくれる。艶やかで女性らしいイメージがある藤だが、実際に会うと、竹を割ったような性格で姉御肌だとわかる。
そんな藤が部屋に入り、隣の控室ですでに野口五郎が待機していると聞くと、途端にソワソワしだす。
「はぁ~、緊張する」と言いながら、室内を行ったり来たり……。そして対談時間ピッタリに野口が笑顔で登場すると、藤の緊張がマックスに──。
(キャー、五郎さまぁ~)とは、叫ばなかったものの、一段高い声で、「今日は本当にありがとうございます。よろしくお願いします」と、ごあいさつ。笑顔は絶やさないものの、緊張が伝わる。“推し”との対面は、妖艶な大人の女性をあどけない少女の顔に変えた──。