だんだんと距離が縮まった二人

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最推しの一曲は『オレンジの雨』

野口:それにしても、小学校でぼくの歌を歌ってくれたってことは、あや子さんも歌手を目指していたの?

藤:はい、藤あや子としてのデビューは28才と遅かったのですが、幼い頃から歌が好きでずっと歌手になりたかった。演歌の道を選びましたが、五郎さまのご活躍を見てアイドルに憧れた時期もあったんですよ。

〈そんな藤が何度も歌い、最も魅了されたのが『オレンジの雨』だという〉

藤:『オレンジの雨』は、繊細でやさしいそれまでの五郎さまのイメージを一変する衝撃的な曲でした。“おれについて来い”って上から目線で訴えかけるようなタイプの曲で……。当時は珍しかったですよね。

野口:ぼくも驚いたよ。この曲はレコーディングの日のこともよく覚えています。横浜音楽祭の本番を終えて夜、帰ろうと思っていたら、マネジャーから、「これからレコーディングです」と言われて……。しかも作曲を担当してくれた筒美京平先生が立ち会うという。ありがたいんだけど、京平先生が来るとレコーディングが長くなるんだよね(笑い)。

藤:相当お疲れでしたよね。それでも、あれほどのクオリティーで歌えるんですね。

野口:サビの部分のビブラートは、あえてデフォルメした歌い方にしてみたんだよね。普通に歌えば、「♪オーレンジの雨の中」となるところを「♪ウォオーレンジの雨の中」と歌ってみた。そうしたら、京平先生もおもしろがってくれてね。

藤:当時は、そんなふうにビブラートを自在にきかせられるアイドルはほかにはいませんでした。“こぶしをまわせるアイドル”は本当に五郎さまだけ!

野口:(笑い)そんなふうに言い切ってくれる、そういうところだよ、ぼくがあや子さんのこと、かっこいいなぁ、男前だなぁ、と思うのは。

藤:いえいえ(照れ)。そんな……うれしいです(照れ)。

第2回につづく)

【プロフィール】
野口五郎/1971年5月1日、15才のとき『博多みれん』でデビュー。その後、『オレンジの雨』(1973年)、『私鉄沿線』(1975年)など、数々のヒットを飛ばし、1970年代を代表するアイドル“新御三家”のひとりとして活躍。2022年に、桑田佳祐ら同級生5人と『時代遅れのRock’n’Roll Band』のレコーディングに参加。今年6月からコンサートツアー「Follow Your heart~こころのままに~」もスタート。

藤あや子/1989年、28才のときに藤あや子の名でデビュー。『おんな』(1989年)や『こころ酒』(1992年)がヒット。日本有線大賞などを受賞。料理が得意で、無類の猫好きとしても知られ、2020年には2匹の愛猫との写真集『マルとオレオと藤あや子』(世界文化社)を刊行。7月3日に新曲『雪の花』発売。9月8日に35周年記念コンサートを福井県・高浜町文化会館 大ホールで開催。

取材・文/上村久留美 撮影/政川慎治

※女性セブン2024年7月11・18日号

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