田村被告の自宅前にはいくつものクーラーボックスが置かれていた
「現場まで自家用車で行っているし、すぐにでも娘が逮捕されるだろうと思っていました。私の手で(警察に)突き出すということは、娘を裏切る行為になるような気がして、できませんでした。
もし通報して突き出したら……。娘をこれ以上、苦しめたくない。“恐ろしくて通報できない”という気持ちはありませんでした」(同前)
修被告は、殺害動機や首を切断した理由について、瑠奈被告に尋ねることはしなかった。
「本人から“こういう理由でやった”とか“こういう理由でやるのどう?”とか尋ねられたら答えたかもしれないが、本人が言わないことについて、こちらから尋ねることはしませんでした」(同前)
修被告は退廷時、手錠と腰縄をつけられている間、弁護側の席にいる浩子被告に顔を向けた。夫婦は数秒間、視線を交わして、修被告が頷く仕草をしたようにも見えた。一方の浩子被告は目を真っ赤にしながら、夫の顔を見つめていた。まもなくふたりは視線を外し、修被告が法廷から消えた。
愛する娘を守りたい──。そんな普通の親心が、日本の事件史に残るであろう猟奇殺人の背景にあるようだ。
◆取材/高橋ユキ(ジャーナリスト)