1999年、ガルベスが1本塁打あたりに要した打数は清原より少なかった
翌年7月31日、甲子園での阪神戦でガルベスは判定に何度も苛立ちを見せ、6回の投手交代の際、橘高淳球審にボールを投げ付けた。これによって無期限出場停止に。その影響もあり、1998年は打率.102、1本(横浜・川村丈夫から)、4打点に終わっている。だが、開幕投手に選ばれた1999年、再び打棒が爆発する。この年の3人の成績を比べてみよう。
■1999年の打撃成績(桑田・斎藤・ガルベス)
桑田真澄:36打数8安打0本2打点 打率.222
斎藤雅樹:30打数6安打0本3打点 打率.200
ガルベス:70打数10安打4本11打点 打率.143
桑田や斎藤は「打撃の良い投手」という評価通りの打率を残しているが、ガルベスの規格外のパワーとインパクトが上回った。1999年の4ホーマーの内訳はこうなる。
■1999年のガルベスの本塁打
(試合日、スコア、対戦相手、投手、本塁打種類、打球方向、推定飛距離)
5月15日:×4対7 横浜・戸叶尚 4点ビハインドでソロ 右120メートル
5月21日:○6対4 阪神・吉田豊彦 先制満塁ホーマー 左110メートル
8月13日:○8対5 横浜 川村丈夫 逆転満塁ホーマー 左140メートル
8月27日:○5対1 広島 佐々岡真司 1点リードで2ラン 右115メートル
投手として史上初のシーズン2本の満塁弾を叩き込んでいる。1本は広い甲子園のレフトスタンド、1本は横浜スタジアムのレフト場外に運んだ。他の2発はライトへ流し打っている。投手のシーズン4本塁打以上は1977年の松岡弘(ヤクルト/5本)以来だった。この年、ガルベスは70打数4本塁打で、17.5打数に1本の割合でホームランを放っていた。巨人の他打者と本塁打率(1本塁打あたりに要した打数)を比較してみよう。
■1999年の巨人の本塁打数と本塁打率
(4本塁打以上を対象。本塁打率は小数点2位を四捨五入)
松井秀喜:42本 11.2
高橋由伸:34本 13.4
マルティネス:16本 16.4
石井浩郎:11本 16.9
ガルベス:4本 17.5
清原和博:13本 20.2
二岡智宏:18本 23.2
村田真一:9本 26.3
後藤孝志:7本 28.3
清水隆行:8本 53.0
元木大介:6本 54.5
仁志敏久:9本 56.7
ガルベスの本塁打率は、通算525本の大打者・清原よりも上で、近鉄時代に打点王を獲得した石井との差はわずか0.6しかない。打数自体が少ないとはいえ、投手として驚異的な数字だった。投手登録のシーズン4本塁打以上は、ガルベス以後では大谷翔平(日本ハム)しかいない。ただ、大谷が投手として出場しながらホームランを放ったのは2016年7月3日のソフトバンク戦だけ。NPB通算48本中47本は指名打者、外野手、代打として打っている。