米国にも直言「アメリカに平手打ちを喰らった」
〈これ等のもろもろの恐怖は、文明の基礎そのものに対する脅威というよりほかはありません。また、別のことばでいえば、国際法に対する暴力的違反であって、これは、人間の安全、自己防衛を阻止する結果になり、さらに、私どもを、その膝下に引き据えようとする日本を援助する結果になります。正義のチャンピオンであるアメリカが、攻撃軍を助け、事実として、私どもを動揺させている非人道的行為を奨励することになってよいものでしょうか?
私どもは、アメリカの態度について、驚くとともに、国際連盟の規定による条約やら原則やらを忠実に遵守し、その結果、満州を失って苦しんでいる私どもは、こんにちまで、私どもが教えられ、いつかは、肩を並べたいとおもって来たアメリカに平手打ちを喰らったとおもわざるを得ません。〉
そして最後に、検閲下にある日本の状況と日本軍への批判を展開した。
〈もし、日本の民衆が、中華民国において起こっていることを知ったならば、軍人たちは、彼等の戦争──残虐行為はいうまでもなく──を続行することはできないはずです。日本最大の市場を破壊しつつあるのですが、それを彼等は、国民になにも知らせてはいないのです。[中略]
軍人が、彼等の地位を占めている限り、日本から、正義を期待することは、不可能なことなのです。〉
(「中華民国は、その地位を保持する」「フォーラム」掲載、1937年12月/以上、引用は前掲書より)
宋美齢の発言には、「支援してください」「お願いします」という懇願する言葉はない。媚びることなく、相手を揺さぶり、言葉巧みに共感を引き出して、相手から「是非とも支援させて欲しい」と言わせるような巧みな話術である。それは広い見識と鋭敏な国際感覚、深い洞察力を兼ね備えているからこそできることだろう。
一方では、自信過剰で、虚勢を張り、すべてが真実だと思わせてしまう。一言で言って、卓越したアジテーターだ。