英メディアでも日本批判を展開
外国メディアを活用した日本批判は、英国に対しても行われた。1938年に英国のバーミンガム・ポスト紙に発表した記事には、「日本の大陸政策は世界の平和を脅かせ、英国の損失を招く」として、激しい日本批判を展開した。
〈日本は、一人の日本兵は、十人の中華民国兵に匹敵すると自慢しておりました。そして、また、日本に関する限りでは、三カ月以内に戦争は終わるということと、日本が、中華民国にあるもので必要とするものは、すべて日本の自由になるということを明言したのであります。[中略]
この戦争の結果は、どうなりましょうと、世界全体にわたって、広範囲に影響を、およぼすことは間違いありません。さらに重要なことは、それは、特にイギリス人の国家的、経済的将来と、大英帝国自治領の国民とに、間接的にはもちろん、直接的にも影響を持つことでありましょう。もし、日本が勝てば──民主主義諸国が、中華民国に、自衛のための必要な装備と軍需品を手に入れるために経済的便宜を図ってくれることを拒んで、中華民国の立場を苦しくするために、日本に加担するようなことがなければ、日本は勝つはずがないのでありますが──大英帝国の属領に対する脅威は、次第に加速度を増してゆくことでありましょう。[中略]〉
(英紙バーミンガム・ポスト、1938年5月初旬、前掲書)
その他、欧米メディアのインタビュー、武漢の米国人伝道者会議、英語版の出版物、英語による講演など、多数にのぼっている。
宋美齢の精力的な海外メディア発信については、前述のように、日本政府が深刻な脅威だと受け止めていたとする記録が残っている。その後も、宋美齢は渡米して全米で講演を行うなど、米国世論を動かす活躍を見せたのだった。
【プロフィール】
譚 ?美(たん・ろみ/?は王偏に「路」)
作家。東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。同大訪問教授などを務めたのち、日中近現代史にまつわるノンフィクション作品を多数発表。米国在住。主な著書に『中国共産党を作った13人』『阿片の中国史』『帝都東京を中国革命で歩く』『中国「国恥地図」の謎を解く』など。最新刊は『宋美齢秘録 「ドラゴン・レディ」蒋介石夫人の栄光と挫折』。