全国で熱戦が続く夏の甲子園予選。高校球児たちの激闘を支えるのが、審判員をはじめとする運営スタッフだ。60歳を超えた今も高校・大学野球の審判員として活躍する内海清氏は、1994年に31歳で社会人野球を引退。審判員となった後は、信金勤務の傍ら、週末を中心に年間80試合ほど審判員を務め、2019年にバー経営者となってからは、平日も審判員としてグラウンドに立ち続けている。高校野球の審判員の知られざる待遇や苦労について、スポーツを長年取材する鵜飼克郎氏が内海氏に聞いた。(全4回シリーズの第3回。第1回から読む。文中敬称略)
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アマチュア野球の審判員は、野球が好きでないとやっていけない“仕事”であることは間違いない。
高校野球の審判員はボランティアで、数千円程度の日当が支給されるが、球審も塁審も同額だ。それとは別に交通費が支払われ、弁当も支給される。
高校野球の審判員は左胸に「F」マークが入ったシャツとズボンを着用する。各都道府県によってやや違いはあるようだが、基本的に市販品(高校野球用)を購入し、クリーニング代も自費。ちなみに「F」の意味は連盟(Federation)、闘志(Fight)、友情(Friendship)、正々堂々(Fair play)の4つのFだという。シャツとズボンが貸与されることもあるが、審判員を辞める際に返却する義務があり、アンパイアマスクやプロテクターといった審判用具は自前で準備しなければならない。
春夏の甲子園大会の審判は、日本高野連から各都道府県の高校野球連盟にオファーがあり、各連盟が優秀な審判員を推薦する。甲子園出場校と同様に“都道府県代表の審判員”であるが、それでもボランティアである。県立尼崎高校野球部で甲子園を目指し、大学、社会人とプレーした後に高校・大学野球の審判員となった内海清が言う。
「私も兵庫県高野連から“甲子園の審判をやってくれないか”と打診されたことがありましたが、当時は信金の支店長をやっていたので2週間近くのまとまった休みは取れず、お断わりするしかありませんでした。もちろん甲子園大会の審判を務めるのはアマチュア審判にとっては最高の名誉だと思いますが、日当などは県大会と同じ扱いです」(以下同)