「前のマンションの部屋は3階でした。3階でエレベーターがなくて、階段の上り下りがもう大変だったみたい。手すりがなかったからね、危なかったんです。それで見つけた安い場所が今住んでいるここなんです」
慣れ親しんだ場所を離れ、新しい場所で始まった生活は節子さんには厳しいものだった。
「節子は初めての場所で視力がどんどん悪くなったもんだから、周りが全然分からなくなっちゃったんです。前のところは長く住んでいたから、買い物も行けたし、近くのコンビニなんて1人でも行けた。近所の人もいて、知り合いもいるわけですよ。それが、こっちに来たら初めての人ばっかりです。最初に挨拶したぐらいなもんで、周囲との付き合いがなくなっちゃったんだよね。
後から思うとね、僕としては1階だしスロープはあるし、バリアフリーになってるし、 いろいろなところに手すりもあるし、良いところだと思ったんだけどね。本人にはね、もしかしたら、あんまりだったのかもしれない。もっと近場で1階のところを探せばよかったとか、今となっては色々と後悔があります……」