「相手にそういうことを言っても、なんとも思ってないんですよ。いじめる連中はいじめていいと思った相手に平気で使います。私も散々使われました。そして『ノリだから~』『ネタだろ~』とか言います。特別でもなく、それこそ日本中で起きているでしょう。リアルもネットもイジメまみれですから」
誰も味方はいないし教師も知らぬ存ぜぬ
2018年、熊本県で起きた女子高校生に対するいじめ事件も「死ね」と繰り返しいじめていた側は「日ごろのノリ」と熊本地裁で証言している。また2021年に東京都町田市で起きた女子小学生に対するいじめでも「死んで」といじめの側はアプリのチャット機能で執拗に送りつけていた。2022年に大阪府門真市で起きた男子中学生に対するいじめ認定でも「しんでみーや」「Sine」と執拗に書き込んで追い込んでいる。
このすべてで、いじめられた側は命を絶っている。命は絶たなかったが地獄だったと語る彼も同じような経験をしたという。
「私もそういう『ノリ』を使って集団で追い込んでくるパターンでした。誰も味方はいないし教師も知らぬ存ぜぬでした。いじめのグループはいかにもなヤンキーとかでないチャラいだけの陽キャでしたし、あくまで『あーあ、◯◯くん死ねばいいのに!』とかネタっぽく言ってくるわけです」(前出の30歳会社員)
ノリでイジってネタ。哀しいかなごく当たり前にリアルの内輪やインターネットの界隈で使われている。彼に投げつけられた言葉の元ネタは2000年代後半に登場したものだが、これはいつの時代もその時々の流行ったネタがこうした行為に使われやすいというだけでお笑いが悪いわけではない。言葉も刃物といっしょで使う人次第、ということか。
「いかにもなヤンキーの恫喝も怖いですけど、そうじゃないほうも、より陰湿でじわじわ精神を蝕みますよ。中学時代は本当に黒歴史で、なんであんな目にあったのか、いまでもわかりません」
もちろんそういったヤンキーというか、不良の脅迫的な言葉も令和に健在だ。北海道旭川市のウッペツ川で命を奪われた女子中学生はわいせつな画像を無理やり撮られたあげく10人以上のグループから脅迫を受け続けた。「画像を消してください」と懇願する女子中学生を「死ぬ気もねぇのに」と集団で追い込んだ。報道によれば、女子中学生が極寒の中で入水したのちもいじめグループはみんなでスマホ撮影していたとされる。