宮崎県日向灘を震源とするM7.1の地震をきっかけに、政府が史上初となる南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表、改めて震災への備えが意識されている。そして、南海トラフ地震発生後にさらなる脅威となるのが、「富士山噴火」のリスクだ。
政府の地震調査研究推進本部が公表する南海トラフの「想定震源域」に含まれる宮崎県日向灘を震源とする地震(最大震度6弱)に続き、関東でも神奈川県西部地震(最大震度5弱)が発生。富士五湖周辺など山梨県内も震度4に見舞われた。
京都大学名誉教授で地球科学者の鎌田浩毅氏はこう言う。
「南海トラフ地震は約100年に1度の頻度で起きており、前回は1946年の昭和南海地震(M8.0)です。今回の日向灘地震で再び、“南海トラフ地震の季節”に入ったと言えるでしょう。神奈川県西部の地震のほうは無関係と考えられますが、南海トラフ地震が発生すれば、富士山は噴火する可能性が非常に高い状態です」
富士山の噴火については、2011年の東日本大震災をきっかけにリスクが高まってきたという。鎌田氏が続ける。
「東日本大震災の際、富士山の地下20kmにあるマグマ溜まりが揺すられ、その4日後に富士山の地下14kmで最大震度6強の地震が起こったことでマグマ溜まりの上部の岩盤にヒビが入りました。それによって富士山は噴火しやすい“スタンバイ状態”になった。マグマには5%ほどの水分が含まれており、地震によってマグマ溜まりが大きく揺すられたり、割れ目ができたりして内部の圧力が下がると、水分が水蒸気となって沸騰し、体積が1000倍ほど増える。その結果、マグマは外に出ようと上昇し、地表の火口から激しく噴火するわけです。
前回の富士山噴火は1707年の宝永噴火で、その49日前には南海トラフが震源とされる宝永地震(推定M8.6)が起きており、それが引き金となるプロセスを踏んだと考えられている。南海トラフ地震の震源域は富士山に近いため、『次に大きな揺れが起きたら、もうマグマ溜まりは持ちこたえられないだろう』というのが多くの専門家の見方です。
平安時代は50~100年に1回程度、富士山は噴火していましたが、今は300年ほど噴火していない。私の計算では300年分のマグマの体積は東京ドーム約240杯分にあたります。それが噴出すれば、被害は相当大きなものになるでしょう」