それでも「やってよかった」と振り返る。
「会社には叱られるし、いざ撮影が始まると公演先から夜行で帰京したり、移動中に台本を覚えたりと、大変な生活になりました。でも街を歩くと役名で呼ばれたり、共演者の方からも温かく接していただき、トイレの前で熱心に誘っていただいた石井ふく子先生には感謝してもしきれません」
その後も時代劇、現代劇を問わず出演が続いた。2000年には『教習所物語』(TBS系)で鬼教官役を演じたが、実はこの時、彼女は“ペーパードライバー”だった。
「実生活では車を運転することがほぼなく、ペーパードライバー状態が続きました。実は70歳を過ぎた時に決意して運転免許証は返納したんです」
精力的に活動してきたが、10年前には腰部脊柱管狭窄症で手術を受けた。
「痛みで歩行も難しくなってしまい、ステージで元気よく走り回ることができず、医師の勧めで手術を決断しました。去年も腰の圧迫骨折で皆様にご心配をおかけしましたが、そんな困難も乗り越えることができました」
78歳の今も生涯現役として歌い続けるつもりだ。
「若い人が集まるライブハウスで歌うのはすごく刺激になります。新しいことに挑戦し、知らない世界を体験するのはとても楽しい。今後は音楽や歌を学ぶ若者のお手伝いができないかと、漠然とですが思っています」
10月15日のデビュー記念日に合わせた新曲発表も予定しているという。
幸せは歩いてこない、だから水前寺清子は腕を振って、足を上げて今日も歩いていく。
※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号