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ハライチ岩井勇気氏、人気エッセイ最新巻について語る「世間で言語化されていないあるあるや視点を見つけると“書ける”感じがします」

ハライチ岩井勇気氏が新作について語る(撮影/国府田利光)

ハライチ岩井勇気氏が新作について語る(撮影/国府田利光)

 お笑い芸人・ハライチのボケ担当でネタ作り担当、岩井勇気氏は、以前、エッセイの連載を依頼された時のことをこう書いていた。〈出た。なんとなくの雰囲気で、この人なら書けそうだな、と思われている。まぁまぁ世に名前が知られているコンビの、陰に隠れがちな方〉〈そんな感じの奴に「あいつ“ぽい”よね~、文章書かせてみようか」みたいなのがお決まりになっているのだろうか〉……。

 ともあれ連載は大好評のまま7年目に入り、2019年の単行本『僕の人生には事件が起きない』と2021年刊行の第2弾『どうやら僕の日常生活はまちがっている』はベストセラーに。そしてこのほど刊行された待望の第3弾が、『この平坦な道を僕はまっすぐ歩けない』だ。

 表題も著者によるもので、「歯医者をハシゴする」「遅刻時の完璧な過ごしかた」など、24篇を所収。むしろ何も起きないからこそ視点の鋭さは際立ち、文章自体、うまくなっていません?

「うーん、どうなんですかね。でも文章はうまくなりたいと思ってはいたんです。別に書くのが好きとかでは全然なく、僕みたいなタイプで文章が拙いとみんながガッカリするから、筋トレ感覚で始めたんです。まあ最初の頃に比べれば、筋肉はかなりついたと思いますよ。丸6年も連載をやると」

 その間、30代独身という環境は若干変化したものの、基本的に事件は皆無なまま。そんな日常にも生じる違和感や〈僅かなもやもや〉を、〈言葉にして面白がることをエッセイではやっていこうと思う〉と前書きにある。

「日常は日常で普通に生活して、それをエッセイに書く時に思い返して言語化している感じですね。

 それこそ前書きに書いた〈司書の仮装のような女の人〉だと勝手に思っていた編集者が急に金髪で現われた時の〈『面白い』という気持ちと『面倒くさい』という気持ち〉の話も、その場で明確にそう思ったかというと、違うと思うんですよ。そんなような気分に漠然と陥っただけで。それを後々言語化してみたら面白いと面倒くさいが両方あって、僕はその面倒くさい部分を文章にして面白がりたいと思った。たぶん言語化したから、そう思ったんです」

 例えば1篇目「ほどよい店で考える」。ある時、昼食を食べ損ね、連日の仕事で疲れきってもいた岩井氏は、昼の営業をあらかた終えた街で〈ランチ16時まで〉と書かれた洋食屋を見つける。

 するとそこは店の構えも〈美味し過ぎるということはなさそうなメニュー〉も今の自分にはほどよい店で、その中からポークソテーとミニドリアのセットを選び、壁にかかったこれまたほどよい〈森の絵〉を眺めるうちにも料理が登場。早速食べてみると〈想像を超えない美味しさ〉が素晴らしく、〈これはもはや満点の78点と言ってもいい〉と大感激。

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