翌日の授業に持っていく食材を買い忘れた際の苦い後悔を綴る「ナタデココだけは絶対に持っていく」や、今でいうオタクも人気者もなぜか垣根なく付き合えた奇跡的な時間について旧友と語り合う「高校生の僕と加藤と“もえたん”」。

 また某巨匠の新作に関して〈これまで目立って滑らずに面白い作品を生み出し続けてきたことが凄すぎるのである〉〈そんな人がドン滑りした時ぐらい、みんなでイジってあげるのが礼儀なのではないか〉と敬意から書く「憧れの監督の最新映画を観て考察したこと」など、思わぬ優しさやフェアさにグッとくるほどだ。

「僕はテレビをあまり見なかったせいか、昔からあるものとか有名人を有難がる習慣がなくて。『オペラ座の怪人』も『ああ、あの』と思ってないから、〈なんなんだコイツは〉〈そういうところなんだよお前のモテない理由は〉って、自分と同世代的な感覚でフラットに観ちゃうんですよね(笑)。

 あとはキラキラしすぎて逆に困った高校時代の話もギリギリ鼻につかない形で書けたと思うし、ここには仕事に遅れた話は書いても職業は一切書いていない。その方が僕のことを知らない人でも楽しめる日常の話になると思ったからで、ご存じハライチの岩井です、みたいなノリで書くのは、ホント、恥ずかしいんです」

 そうした含羞のおかげか、読後感も驚くほど爽やかな、とある人の日常の話である。

【プロフィール】
岩井勇気(いわい・ゆうき)/1986年埼玉県生まれ。上尾市立原市中学校から県立伊奈学園総合高校卒。幼馴染の澤部佑氏とお笑いコンビ・ハライチを結成し、2006年デビュー。2009年にはM-1グランプリ決勝に初進出し、『ピカルの定理』『ハライチのターン!』等のテレビやラジオ、音楽番組や麻雀番組まで幅広く活躍。昨年からはフジテレビ系『ぽかぽか』でMCを務め、2018年連載開始のエッセイ『僕の人生には事件が起きない』はシリーズ累計19万部を突破。170.5cm、57kg、O型。

構成/橋本紀子

※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号

関連記事

トピックス

日本人俳優として初の快挙となるエミー賞を受賞した真田広之(時事通信フォト)
《子役時代は“ひろくん”》真田広之、エミー賞受賞の20年以上前からもっていた“製作者目線” 現場では十手の長さにこだわり殺陣シーンでは自らアイディアも
NEWSポストセブン
葉月里緒奈の現在とは…
《インスタでぶっちゃけ》変わらない葉月里緒奈(49)「映画はハズレだった」「老眼鏡デビュー」真田広之と破局から“3度目結婚相手”までの現在
NEWSポストセブン
主人公を演じる橋本環奈
舞台『千と千尋の神隠し』中国公演計画が進行中 実現への後押しとなる“橋本環奈の人気の高さ” 課題は過密スケジュール
女性セブン
10月には2人とも33才を迎える
【日本製鉄のUSスチール買収】キーマンとなる小室圭さん 法律事務所で“外資による米企業買収の審査にあたる委員会”の対策を担当 皇室パイプは利用されるのか
女性セブン
殺人と覚醒剤取締法違反の罪に問われた須藤早貴被告
「収入が少ない…」元妻・須藤早貴被告がデリヘル勤務を経て“紀州のドン・ファン”とめぐり会うまで【裁判員裁判】
NEWSポストセブン
自身の鍛えている筋imoさ動画を発信いを
【有名大会で優勝も】美人筋トレYouTuberの正体は「フジテレビ局員」、黒光りビキニ姿に「彼女のもう一つの顔か」と局員絶句
NEWSポストセブン
シンガーソングライターとして活動する三浦祐太朗(本人のインスタグラムより)
【母のファンに迷惑ではないか】百恵さん長男の「“元”山口百恵」発言ににじみ出る「葛藤」とリスペクト
NEWSポストセブン
中山秀征にいじられた柏木由紀(時事通信フォト)
《すがちゃん最高No.1と熱愛》柏木由紀、事務所の大先輩中山秀征の強烈イジリ「ラブ&ゲッチュ」に体くねらせて大照れ
NEWSポストセブン
交際中の綾瀬はるかとジェシーがラスベガス旅行
【全文公開】綾瀬はるか&ジェシーがラスベガスに4泊6日旅行 「おばあちゃんの家に連れて行く」ジェシーの“理想のデートプラン”を実現
女性セブン
水原被告の量刑は大谷次第か
【勝負は10月25日】大谷翔平、悲願のワールドシリーズ初日に水原一平被告の判決 量刑は大谷の意見陳述書次第、厳罰を望むか温情をかけるか
女性セブン
愛子さま
愛子さま、日赤への“出社”にこだわる背景に“悠仁さまへの配慮” 「将来の天皇」をめぐって不必要に比較されることを避けたい意向か
女性セブン
羽生結弦(時事通信フォト)の元妻・末延麻裕子さん(Facebookより)
【“なかった”ことに】羽生結弦の元妻「消された出会いのきっかけ」に込めた覚悟
NEWSポストセブン