パリ五輪の期間中、選手やその関係者に対するインターネットでの誹謗中傷は8500件超あったと、国際オリンピック委員会(IOC)選手委員会が発表した。日本でも、負けた選手へ心ない言葉を投稿するユーザーが相次いだことが問題視され、五輪閉幕から数日後のタイミングで、横浜DeNAベイスターズの関根大気選手が自身への誹謗中傷投稿について「発信者情報開示請求」の申し立てが認められたと公表したことが話題になった。ライターの宮添優氏が、SNSでアスリートへの誹謗中傷を繰り返したユーザーに、なぜ誹謗中傷投稿をしたのかについて聞いた。
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プロアマ問わず、アスリートたちはネットでの「誹謗中傷」に悩まされている。最近は日本でも、告訴や損害賠償請求の手続きをとったと公表することが増えつつある。誹謗中傷にどう対峙するかは、これまで選手個人の意向にまかされてきたが、日本プロ野球選手会をはじめ、各スポーツの団体なども追従するとみられる。取材した大手紙社会部記者は、これら最近の変化は、選手への誹謗中傷対策について大きな転換点になると説明する。
「野球選手やサッカー選手などへの誹謗中傷は、インターネットが普及する以前からありました。野球場やサッカー場へ行けば、敵チームの選手やプレーにヤジを飛ばすお客さんが必ずいたし、選手とその場で口論になることもありました。でも、最近の誹謗中傷は違う。本当にファンなのかも、どこの誰かもわからない人から、急に『死ね』『消えろ』『辞めろ』と書き込まれたり、メッセージを送りつけられる。いくら有名人だからといって、何を言われてもいいわけではありません。誹謗中傷によって精神的に不安定になり、思うようにプレーができなくなった選手もいる。やっと具体的に動いたな、という印象です」(大手紙社会部記者)
本当に選手がプレーに集中できなくなるほどの言葉が投げつけられているのかと疑うなら、プロ野球の試合がある時間帯にSNSを覗いてみるといい。チャンスの場面で凡打に終わった打者、ピンチで打たれた投手には、匿名のSNSアカウントから死ね、バカ、野球をやめろなどの罵詈雑言がいくつも本人のアカウントに直接ぶつけられる。サッカーの国際試合のときには、偶発的なファールにより相手を負傷退場させた選手に人殺し、サッカーをやめろ、といった言葉が投げ付けられる。
これら誹謗中傷している人たちのSNSアカウントをリアルタイムでチェックしていたところ、気が付いたことがある。誹謗中傷の投稿の半分程度は、投稿から一日かそこらで消される、という傾向があるのだ。おそらく、頭に血が上るなどして誹謗中傷をしてみたものの、時間が経って冷静になり、謝罪も訂正もしないまま、コッソリ消しているのだ。