Aくんの母親は、声を震わせて訴える。
「あと一歩見つかるのが遅かったらと思うと……。自殺まで追い込まれるようなことを息子はしたんでしょうか? 私たちは家族全員が死を考えるほどの苦悩を味わいました。
都で私学行政課というものが設けられてはいますが、公立学校に比べると、私立学校で起きたトラブルを相談できる公的機関が少ない印象です。この仕組みにも大きな問題を感じています」(Aくんの母)
親子が限界を迎えつつあった2023年1月7日、学校に呼ばれたAくんの父親は“これ以上の指導・支援は難しいので外部進学をしてほしい”との旨を言い渡された。「宝仙学園 順天堂大学系属理数インター中学校」のほとんどの生徒がエスカレーター式で高校に進学し、Aくんも中3の夏に内部進学のための書類を提出していた。しかし、学校説明会などがとっくに終わった時期にいきなりイチから高校受験をするはめになってしまった。
かねてより学校側はAくんが何か問題を抱えていると見なしており、外部進学を勧める名目も“治療に専念できる環境で社会性を身につけてほしい”というものだった。しかし、病院で発達障害などの検査を受けたところ、特にAくんに問題は見つからず、一家は最後まで困惑するばかりだった。
中学を卒業したタイミングでAくん一家は動画を撮影・拡散された件について警察に被害届を提出し、動画を撮影した生徒1人が書類送検された。しかし問題の動画は既にスマホから削除していたようで、嫌疑不十分で不起訴になったという。ただ、ほかの加害生徒からは〈ひろめてごめん〉とLINEで謝罪があった。
いじめの加害生徒たちは「宝仙学園 順天堂大学系属理数インター高等学校」へと進学し、Aくんが去った学び舎で今も過ごしている。Aくんは苦しい胸の内を吐露する。
「トラブルを起こした連帯責任として、僕も加害者もみんな内部進学できないというなら、まだ納得いったんです。でも実際は、“臭いものにフタ”のように僕だけが排除されました。
スマホをめぐる嫌がらせやいじめが問題になっているのをニュースなどでよく見かけます。僕のような被害を受ける人、僕のような苦しみを味わう人を少しでも減らしたい。そのために思い切って声を上げることにしました」