現在通う高校では教師や友人に恵まれ、部活動にも打ち込み、充実した日々を送っているというAくん。しかし、彼の心の傷は完全には癒えていない。かつて通っていた学校を離れた今でもふとしたときに別室指導や修学旅行での出来事、日々受けていたいじめの恐怖がよみがえり、1時間以上も涙が止まらないことがある。2023年11月、Aくんには心的外傷後ストレス傷害(PTSD)の診断が下った。
そして2024年5月、Aくん一家のもとに1通の封書が届いた。差出人は、「宝仙学園中学校・高等学校」。校長の署名のもと、“2023年12月下旬頃、Aくんの修学旅行中の行為が撮影された件及び撮影内容が一部生徒に送信された件について、東京都私学部からいじめ防止対策推進法の重大事態に当たるとして報告を求められ、その報告を行った”と伝えられた。具体的にどのような報告をしたのかは説明されておらず、「ご不明な点等ございましたら、直接、面談してご説明いたしますので、ご遠慮なくご連絡頂ければと存じます」としている。
ただ、Aくん一家に学校関係者と直接やり取りする気力はもう残っていなかった。6月中旬、今度は東京都私学部に提出したという調査結果報告書が学校側から届いた。Aくんの母が語る。
「2023年12月、息子は一連のトラブルについて東京都生活文化局・私学部私学行政課に再度連絡しており、それを受けて、私学部が学校に働きかけたようです。第三者に開示しないように学校側に言われているので、詳細は明かせませんが、“東京都私学部から指摘を受けて、再検討した結果、いじめの疑いがある重大事態として同私学部に報告するに至った。当学園として認識が甘かった”というような内容ではありました。
ただ、“再検討した結果”といいますが、その中で息子本人に一度も聞き取りがなかったことが引っかかっています。また、生徒間のやり取りには触れていても、息子(A)を一番追い詰めた別室指導については記載がなく、誠意を感じられません」(Aくんの母)