名刺を捨てられた
2008年の監督就任当初は選手勧誘も小牧が担当し、中学野球の現場にも足を運んだ。しかし、韓国の学校という先入観が先行し、勧誘しても相手にされないことが続いた。
「目の前で名刺を捨てられたこともありますし、高校野球関係者を集めた会合に僕だけ呼ばれないこともあった。チーム関係者や親御さんからしたら、こんな得体の知れない学校ですから(笑)、それも仕方なかったと思うんです。それでもひたすら通って誠意を見せ続けていたら、協力してくれる人が出てきた。中学野球関係者の方に言われた一言は今も心に残っています。『京都国際に(教え子を)預けるんちゃうぞ。信頼するお前に預けるんや』って」
京都国際の監督を辞めたくなることは幾度もあった。その度に、協力者のその言葉が浮かぶ。
「声を掛けて来てもらった以上、その生徒への指導を投げ出して、僕だけ他の条件の良い学校に移ることなんて絶対にできない。覚悟を持って来てもらう以上、こちらも覚悟を持って接しているつもりです」
報道陣の前では常にニコニコしている小牧も、曽根海成(現・広島)が主将を務めた2012年頃、練習試合中に曽根に暴力を振るい、3か月の謹慎処分を受けた過去がある。小牧にしてみれば、蒸し返されたくない話題だろう。だが、この件にも逃げずに向き合う。
「まだまだ選手のレベルが低く、曽根の実力だけが突出していたチームだったんです。試合中、仲間のミスに曽根がイライラして、自分の思い通りにいかないことにふて腐れた態度をとっていた。『お前がキャプテンとして下手なヤツらをカバーして、引っ張っていかんとあかんやろ』と、つい手が出てしまいました」
昭和の高校野球ならよく見かける光景かもしれないが、現代では許されない指導法だ。本人も「もちろん、今では生徒に手を上げることは絶対にない」と言う。