「マル秘」の印が押されている「調査報告書」と題された内部資料。この資料は7月25日から動画配信サイト「Netflix(ネットフリックス)」で配信がスタートし、大きな話題を呼んでいるドラマ『地面師たち』の“元ネタ”となった事件に関するものだ。劇中で被害に遭う住宅メーカー「石洋ハウス」のモデルとなったのは、大阪市に本社を置く大手住宅メーカー「積水ハウス」。
同社が2017年に55億5000万円を地面師グループにだまし取られる被害に遭ったこの事件で、社内で行った内部調査の内容を詳述したのが、この「調査報告書」だ。世に出ることはなかった「秘密文書」とも言える報告書を通して、ドラマの元となった事件の真相を明らかにする。ジャーナリストの安藤海南男氏がドラマとの類似点に触れながら解き明かす。【前後編の後編。前編から読む】※一部、ドラマのネタバレを含みます
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2017年4月20日。地面師グループと、「積水ハウス」の担当者らが社内の会議室に一同に会した運命の一日だ。
この日は、「客つけ役」(ターゲットになる被害者を探す担当)のIのほか、土地所有者に偽装した「なりすまし役」のH。そして事件発覚後、フィリピンパブで豪遊する様子や、テレビカメラを前に堂々と海外逃亡を図る様子が放送され、事件に対する世間の耳目を集めたKも交渉の「前さばき役」として姿を見せるなど、地面師グループの面々が積水関係者の前に顔を揃えた。同社にとっては、地面師グループ側とのはじめての本格的な接触で、この日がまさに、社運を暗転させる分水嶺となった。
「ドラマでは、小池栄子さん扮する偽尼僧が、迫真の演技で『石洋ハウス』の面々を騙すシーンが描かれています。4月20日の『積水ハウス』と地面師グループの面談では、同じような緊張感のある会話がなされていたと推察されます」(元警視庁捜査2課担当記者)
まんまと騙された積水側だが、その後も後戻りできるタイミングがなかったというわけではない。