「デラクルーズ、タティス・ジュニアと同じように」
若いうちは投手と遊撃に挑戦し、自身の適性を見極めて将来的にはどちらかに専念するやり方もあるだろう。
「やっていくなかで、ピッチャーが良かったならピッチャーに専念するという選択肢もある。ただそれは最悪の話ですね。自分は二刀流で勝負したいです」
ルーキーリーグから挑戦し、メジャーの舞台に立つのは何年後ぐらいに想定しているのか。
「自分の目標としては3、4年ですね。1年でシングルA、2年目にダブルAと、1年ごとにひとつ階段を上がっていくイメージがベストかなと」
桐朋学園には小学校から通い、6年生の時には埼玉西武ライオンズジュニアにも選出された球歴を持つ。しかし、国立大学や難関私学を目指しているような球児ばかりの桐朋学園の野球部は強豪校とはとても言い難く、甲子園に出場したことも、プロ野球選手を輩出したこともない。そういう環境で過ごしながら、メジャーで活躍できるという確信は得られているのだろうか。
「今の自分の実力はまだまだななんですけど、自分の将来性って言うのは、自信を持っていて。名門校とは練習環境も練習時間も違うなかでここまで(強豪校の選手と)同じぐらいの評価をしていただいていることはありがたいことだと思いますし、同時にこれから自分の野球に絞って、一日中野球のことを考えて過ごしたらどこまで成長できるのか楽しみでもあります。桐朋ではテスト前になると、一日中、勉強しないと追いつかないこともありますから」
今後は、日本のドラフト会議が行われる10月24日以降から米国の球団との交渉が解禁となり、1月中旬に契約、2月にキャンプに参加する流れとなる。
「夢はワールドシリーズ制覇。憧れる(今季大ブレイクした)エリー・デラクルーズ(レッズ)やタティス・ジュニア(パドレス、25)という若いスーパースターと同じように、ルーキーリーグから這い上がっていきたいです」
同じ「翔」の名が入った大谷に対する憧れは最後まで口にしなかった。
大谷とは違う道を辿って同じ高みへ。そんな壮大な夢を口にする17歳の矜恃が見え隠れした。
取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)
※週刊ポスト2024年10月11日号