9月28日、穏やかな土曜日の昼過ぎ、東京・有明駅周辺には数百人の老若男女が集まり、異様な雰囲気が漂っていた。この日、東京臨海広域防災公園では「コロナワクチン反対」を訴える大規模なデモ集会が開かれていた。プラカードを持ち熱心に活動する人々が注目を集めたが、その舞台裏には、事前に1万円の報酬を受け取ることを約束し、デモに参加する“サクラ”の存在があった——。
この日デモに参加した40代の男性・Aさんは、デモ開催の2日前に、友人づてにデモの存在を知らされたという。
「僕もその友人も反ワクチンというわけでは全くなかったのですが、『報酬1万円』という話を聞いて、行けばお金がもらえるならと参加したい旨を伝えました。すると、友人から40人程度のグループLINEに招待されたんです」(Aさん)
Aさんが友人からもらったこのイベントのチラシを見ると、「国民集会パレードデモ有明」と銘打たれ、「自己増殖人工遺伝子注射中止!」などと、ワクチン接種反対を訴える文言が並ぶ。Aさんが加入したLINE上では、運営側とみられる人物から以下のメッセージが共有されていた。
《【謝礼1万円!イベント参加ご協力のお願い】この度、以下のイベントにご参加協力を頂ける方を募集しています。謝礼は1万円で、その場で手渡される予定です。ご協力頂ける方は、漢字フルネームを添えて私までご連絡下さい。期限は、9/27 16:00 です。満席になると期限前に締め切るので、早めのお申込を推奨します》(原文ママ)
Aさんは1万円をもらえることを確信し、当日会場へ向かった。集合時間である12時半に公園に訪れると、ステージ周辺にはすでに「ワクチン反対」のプラカードを手にする人たちの集団があったという。敷地の入り口に待っていたのは、グループLINEで様々な告知を行っていた引率者だった。