「今、片づけたいものはありますか?」──映画、ドラマ、舞台で活躍する女優3人にそう問いかけてみた。すると、人生の酸いも甘いも知る彼女らは、意外な言葉を口にしたのだった。
片づけたいのに、片づけられない。散らかりまくったマンションの1室で、50代半ばの女友だち3人が遠慮なしのやり取りを繰り広げる舞台『片づけたい女たち』。年齢、社会との繋がり、死。重く描くこともできるテーマを、あくまでも軽妙に見せている本作。同世代の女性にはもちろん、20年後、30年後に50代を迎える女性たち、50代女性の周りにいる男性陣にとっても、大いに笑い、ふと考えさせられる場面が多いはず。
片づけるとは? 長い人生において、50代とは? 劇中で「ツンコ」「おチョビ」「バツミ」を演じる3人が、これらの難問にどのように向き合い、それぞれの人生を歩んできたのかも気になるところだ。【前後編の後編。前編から読む】
──「片づけたい」と常々思いながらも積み重なっていってしまうのは、「モノ」だけではないですよね。人生のなかで、思いを残したままにしていることはありますか。
松永玲子(以下、松永):そんなことだらけのような気がします(笑)。たとえば職業的なことを言うと、ロシア人作家のアントン・チェーホフの戯曲『かもめ』で「私はかもめ」って言ってみたかったとか、テネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』で少女ローラを演じたかったとか。
後悔というわけではないけれど、その年代にしかできない役というのはやっぱりあって、オファーがなかったなら、自分でリーディング公演(朗読するスタイル)ぐらいやればよかったなと思ったりはします。もちろん、今50代半ばになったからこそ、今回の『片づけたい女たち』の「ツンコ」が当てはまったわけで、それはそれで幸せなことなんですけどね。