食へのこだわりは尽きることなく
所属する事務所もないまま、オーディションを受け続けていた時期は、お母ちゃんが送ってくれる大量のそうめんが空腹を満たす頼みの綱でした。最初の頃は、めんつゆに玉ねぎのみじん切り、それにケチャップと粉チーズといった簡単なアレンジだったのが、いくばくかのお金が入ってくるようになると、凝っちゃいましたね。
和風でガッツリなら、めんつゆにさばの水煮とひきわり納豆、それにみょうが。アクセントは、七味より一味がおすすめです。カレー風味のつけだれはいまでも作ります。こくまろ(辛口)とザ・カリー(中辛)をめんつゆで割って、そこにフライパンで炒めたひき肉と玉ねぎ。隠し味は、コーヒーフレッシュ。
あとは、豚しゃぶのぶっかけ。冷しゃぶにした豚肉と大根おろし、茹でた生なめこと輪切りにしたオクラを、めんつゆとごまだれのダブルスープに投入。ささっとかき混ぜたら、お皿に盛ったそうめんにぶっかけて、ワイルドにすすってください。ここまでくると、もうけっこうな晩餐でしょ。もちろん、母親の味にはかないませんが。
最近、30年以上ぶりにハンバーグを作ってもらったんです。お母ちゃんのハンバーグは超特急で仕上げられるように、玉ねぎは粗みじん。早く確実に火を通すために、5人分を一気に煮込んじゃう。3人家族なのに5人分なのは、翌日、ぼくらに持たせる弁当のためです。一口食べたら、昔の記憶がブワーっと蘇って、「これや、これ!」。思いっきり褒めたかったのに、宝石箱も何も、シャレた表現なんてひとつも出てきませんでした。