つまり直哉被告は“大切な敦子被告の呪いを解いて助けるためには父親を殺すしかない”と考えたのだという。さらに直哉被告の弁護人は「直哉は日常的に霊的な現象を見ていて病的な疾患がある。呪いの存在を信じ、それを解くには隆一さんを殺すしかないと考えた。何らかの精神的な異常があるのではないか」などと述べ、直哉被告が事件当時、心神耗弱の状態にあったことを主張した。
いっぽう検察側が「霊媒師JUN」の正体だとみている敦子被告の弁護人は冒頭陳述で「殺人に敦子被告は関与しておりません。直哉被告の単独犯です」と主張した。
隆一さん殺害後、750万円の退職金のほか2000万円の死亡保険金は、敦子被告の夫、保彰の口座に入金され、直哉被告の購入した高級車のローン返済などに費消されたという。
直哉被告は本当に「霊媒師JUN」の存在を信じていたのか。今後の公判で、敦子被告を中心とする一族の実情がどこまで明らかにされるのか。注目してゆく。
◆取材・文/高橋ユキ(フリーライター)