ただ、その現状は“巨人が選手を育てられない”ことの証明でもある。1994年オフにヤクルトからFAで巨人に移籍し、巨大戦力のなかで出場機会が減る経験もした広澤克実氏は「当時は葛藤もあったが、今は巨人の野球も勉強できてよかったと思っている」としたうえで、巨人と他球団の違いをこう指摘した。
「僕が移籍した当時の巨人には人知れず練習できる室内練習場がなかったが、今は12球団で一、二を争ういい練習環境がある。にもかかわらず、他球団から『この巨人の選手が欲しい』という声が聞こえてこない。選手の育成に携わる人材が機能していないのです。
二軍監督の桑田真澄氏が『こんなに練習して、なぜうまくならないんだろうね』と漏らしたと伝え聞きますが、そんなことを言ってはダメ。いくらFAで大物選手を獲っても、育成するコーチ陣がいないと常勝球団にはなれない」
何より大切なのは、球団が「ビジョン」を持つことだと広澤氏は続ける。
「7年目の岸田が育ってきたのに甲斐を獲り、同時に4番バッターも獲りたいというのではビジョンが見えません。ピンポイントの補強ではないから、昔のような『FA欲しい欲しい病』が再発したと見られてしまう。経営や育成のしっかりした方針が見えてこないところに、問題の根源があるのではないか」
ストーブリーグの“獲れた、獲れない”に一喜一憂するようでは、球界の盟主の復活は遠い。
※週刊ポスト2024年12月6・13日号