危険ドラッグを吸った男が車を暴走させた事件現場で、献花に向かう田村憲久厚生労働相(左から2人目)、小池百合子衆院議員(同3人目)ら。肩書きは当時。この事故をきっかけに社会問題として大きな関心を集め「危険ドラッグ」という呼称が定まった(時事通信フォト)

危険ドラッグを吸った男が車を暴走させた事件現場で、献花に向かう田村憲久厚生労働相(左から2人目)、小池百合子衆院議員(同3人目)ら。肩書きは当時。この事故をきっかけに社会問題として大きな関心を集め「危険ドラッグ」という呼称が定まった(時事通信フォト)

 CBDは大麻という植物、天然物質由来でナチュラルだから違う、取り締まる必要がないと強弁する人たちがいるが、そのナチュラル信仰のようなところにつけ込まれて、危険に身を置いている可能性を知るべきだろう。新法では合法とみなされる成分含有量の基準が明確になったのに、それを無視したり、法律の抜け穴をくぐるために、人体への影響を誰も把握しない物質を添付し危険ドラッグ化したものを生み出し続けている。なんとなく植物が元ならそんなに悪くないのではと、ふんわり考えてCBD商品と称する新物質を選んでいる人たちは、ナチュラルからはほど遠い人口の合成物を取り込んでいることになる。危険ドラッグが社会問題化した時も、自身が使用している危険ドラッグが「自然由来のもの」だから体に悪影響がない、と考える人は少なくなかったが、この「勘違い」をしている人は、今も一定数存在するだろう。

「合法」をうたいつつ、含有される成分が何なのかもしっかり把握せず、さらにその成分が人体にどのような影響を及ぼすかの臨床試験もされていない、そして毎度のように体調不良者や死者まで出てしまう。結局のところ、遵法意識が極めて希薄で、自身の快楽さえ優先させられればよい、といった人々の手で危険な薬物が世に出回っているだけだ。製造者や販売者が、暴力団などの反社会的組織とつながっている例も、筆者が取材した限り少なくない。悲惨な結果の責任など誰も取るつもりはなく、泣きを見るのは、だまされて購入したり使用する客や、その客が引き起こす事故に巻き込まれる一般市民だけだ。

 今回、摘発されたようなショップや愛好家は、誰にも迷惑をかけていないとよく言う。だが、本当にそうだろうか。彼らが売買するものは嗜好品という楽しいものではない。そして屁理屈を駆使して謎の嗜好品を使い続ける、無責任で利己的な一部の人たちによって、真面目に暮らす市民の生活や人生は脅かされる。だから、本当に危ない、と訴え続けなければならないという思いは、危険ドラッグの取材を始めた当時も今も変わらない。

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