当時人気だったのは石川秀美(58)、堀ちえみ(57)らのような優しい印象がする“タヌキ顔” で、中山さんのような“猫顔”が受け入れられる時代ではなかったという。
「美穂は中森明菜にずっと憧れていました。レコード会社のオーディションではいつも『スローモーション』を歌っていました。担当者から明菜のレコードをたくさんもらってとても喜んでいましたね。だけど結果は『いいものを持っているけど、素で出しても難しい。まずはCMやドラマを決めてイメージを付けたほうがいいんじゃないか』と、断られ続けました」
そんなオーディション終わりに中山と渋谷駅で別れ、途方に暮れていた山中氏にチャンスが訪れる。偶然、すれ違ったかつての部下から『TBSが中学生の女の子を探していて、明日オーディションがあるからどう?』と紹介されたのだ。
「部下に頭を下げて、翌日にTBSへ行きました。TBS前のアマンド前で待ち合わせをしていたら、学校帰りの美穂がセーラー服で現れ、爪に真っ白なマニキュアをしていたんです。これも運で、役がかわいらしい不良少女役でしたのでオーディションも盛り上がり、その夜に合格の電話が来ました。すぐに美穂を呼んで、事務所近くのステーキレストランで食べたディナーがこれまでの人生で一番美味しかったご飯です」
そのドラマが思春期の性への関心をテーマにした、のちに世間を騒がせることになる1985年に放送された『毎度おさわがせします』(TBS系)だった。