あるとき、亀山さんから呼び出され、「今オレ、『踊る大捜査線』っていうのをやっているんだ」と言われたんです。「ヒットしてて知ってるよ。すごいじゃん」「頼みがあるんだけど、犯人役をやってくれない?」「いいよ」「良かったー! 断られると思ってたよ」……なんて会話を交わし、出演することになりました。
僕は水野美紀さんが演じる柏木雪乃の元恋人で、麻薬の売人・岩瀬修役でした。織田裕二君に確保され、湾岸署に連行されるシーンでは亀山さんの演出も受けました。当日は寡黙な雰囲気で誰とも挨拶せずに荒々しくスタジオに入ってくれと。織田君といかりやさんは演出を知っていたのですが、本番まで水野さんに対して怖い雰囲気で演じてほしかったそうです。それで、僕は本番までほとんどの出演者と話をしない犯人役に徹しました。
僕はそれまで『刑事貴族』(日本テレビ系)や『おばさんデカ 桜乙女の事件帖』シリーズ(フジテレビ系)など刑事役が多かったから、ずっと犯人役をやってみたかったんです。だって、犯人役は最初は良い人そうに見せて、後から悪人の本性を現すから人間味があるじゃないですか。しかも犯行理由を明かす見せ場は、作品のクライマックスで演じていて、やり甲斐があるんですよ。2026年には待望の新作が公開されますよね。僕にも声をかけてほしいなぁ。
(第2回に続く)
取材・文/中野裕子(ジャーナリスト) 撮影/山口比佐夫