2014年、台湾の澎湖島で起きた復興航空機墜落事故では乗客乗員58人のうち48人が死亡した。生存者10人中7人が後方座席の乗客で、1~6列目までの前方座席に生存者はいなかった。このように、実際の事故のケースでみると後方座席が助かるケースが多いようだ。これにはいくつかの理由が考えられる。
「航空機事故が起きるのは離陸時が8.5%、着陸時が53%というデータがあります。どちらかというと、着陸時は機首から突っ込むケースが、離陸時は機体後方をひきずるケースが多い。機首から突っ込めば当然、機体前方の方が先に衝撃を受けます。その分機体後方にかかるダメージが小さくなるので後方の方が機体の損壊が小さいといわれています。そのため、相対的に機体前方の座席の被害が多いのかもしれません」(航空ジャーナリスト)
米誌『ポピュラーメカニクス』と『タイム』が米国家運輸安全委員会のデータを基に2007年に行った調査によれば、1971年以降に発生した旅客機事故の座席別の生存率は、後方座席が69%、中央座席が56%、前方座席が49%で、座席の位置によって20%もの開きがある。
実機を使った大掛かりな実証実験も行われている。2012年に米映像配信大手「ディスカバリーチャンネル」が墜落事故の再現実験を実施。本物の旅客機を砂漠地帯に墜落させ、その衝撃度を調べたのだ。地球上に何もせずいるときに体にかかる重力は1Gと定義されている。実験では前方座席に置かれたダミー人形には即死レベルの12Gがかかって機首は粉々。中央座席は8Gでこちらも即死か重傷相当。後方座席だけが生存可能性のある6Gという結果になった。