そして中国の地勢を考えれば、事故が起こった際に国土が放射能汚染に晒されないように、原発地帯は東シナ海や南シナ海の沿岸に造るのがもっともリスクが少ない。当然彼らはそうするだろうが、それは中国の「風下」にある日本にとっては、中国製原発が狭い海を挟んだ場所に何基も造られ、いつ大事故が起こって放射能汚染が日本を襲うかもしれない恐怖におびえる、ということだ。
いや、恐怖だけならいいが、中国は自国の高速鉄道が大事故を起こしたときに穴を掘ってすべて埋めてしまい、知らぬ顔をした国である。粗悪な中国製原発が事故を起こしたら、「二十一世紀前半には北九州にも人が住めたのに」などということにもなりかねない。
この問題の一番厄介なところは、中国国内に原発をどのように造るかというのは純然たる中国の内政問題であって、いかなる国も口を出す権利は無い、ということだ。口を出せば内政干渉になる。また、いかに中国と友好関係がある政治家でも政党でも、まさか中国に対し「粗悪な原発は造らないでくださいね」とは言えない。もちろん外交官も言えない。そんなことを言えば、昔なら戦争になってしまう。また、民主主義国家でも無いから政府に批判的な中国国内の市民団体と連携することも不可能だ。そもそも中国には、政府に批判的な市民団体など存在できない。
だから、とりあえず「歴史家としての私」が警告したわけだが、ではこの近未来に実現する可能性が高い危機的状況に対して、どのような対策があるだろうか? まず考えられるのは、中国との友好関係を強化し緊密な連携の下で、中国の「原発銀座」の建設に日本も積極的に参加していくという方法だが、じつは私はこの方法は絶対取るべきでは無いと考えている。なぜなら、日本は日中国交回復以来このやり方でさんざん食い物にされてきたからだ。
要するに、中国共産党は日本の反日マスコミや媚中派の政治家を操り、ODAなどの形で日本から膨大な援助を引き出した。戦前、日本が中国を侵略し莫大な損害を与えたというのは事実だからそれに見合う援助は当然すべきだったが、中国は天安門事件で世界の顰蹙を買って以降も「お人好し」の日本を利用してさんざん金を引き出したうえ、それを反日教育につぎ込んでいる。日本から見れば「金をドブに捨てた」どころか「盗人に追い銭」をしているわけで、これ以上そんな形で中国を利することは、世界平和のためにもやるべきでは無い。
じつは、私が数年前からこの事態を予測できたにもかかわらず敢えて警告を公にしなかったのは、そうした媚中派だけで無く日本の古い原発にからんだ利権に巣食う連中に、「井沢元彦も原発の必要性は認めている」などという形で私の主張を利用されたくなかったからである。しかし、そうは言っても危機は確実に迫っている。ではどうすればいいのかについて、私はようやく解決策を思いついた。ヒントは前編で述べたように、歴史のなかにあった。