筆者の前で大粒の涙を流しつつ、静かにこう話すのは、2023年に数十億円の負債を抱え倒産した脱毛サロングループ・Xに勤務していた会社員の女性(20代)。結婚式場のスタッフとして働いた後、高給に惹かれ転職したのがXだった。
「入社した直後、自社の脱毛はかなり効果があるな、と試した私自身が実感して、脱毛に興味を持っていた仲の良い友達数人に紹介したんです。いいと思ってくれた友達は、さらに姉妹や家族、友人にもすすめてくれて、私には一件ごとに数万円ですが、インセンティブも入りました」(脱毛サロンで働いていた女性)
冷静に考えれば、自分を中心に紹介した枝葉の先から報酬が入るという話そのものが、少し怪しげではある。だが、このような仕組みを採用している大手、中小の事業者は少なくない。だからこそ一部では勧誘活動が過激になったりして、さまざまなトラブルも発生しているらしいが、女性は「(インセンティブ目当てなど)そうした意図は全くない」と言い切る。
「実際に私が同僚から受けていた施術が良かったのは確かです。ただ、私の友人が行っていた(女性が勤務する店とは別の)サロンでは、施術が杜撰だったりいい加減なところがあったようなんです。それで、あまり効果がないとか感じている知人もいたそうです。ただ、ここまでならまだクレームで済んだはずでした」(脱毛サロンで働いていた女性)
急激な店舗(サロン)展開は拙速だったのだろう、多くの店舗でサービスの質低下が顕著になったと思うと、あっという間に倒産したと女性は振り返る。
3か月分の給与が未払い
元従業員の女性はテレビ報道で倒産を知らされ、直前の3か月分に相当する給与も支払われぬまま、経営者からはペラ紙一枚の謝罪文しかもらえず、無職の人として放り出された。当初は「無職になってしまった」と自身の境遇に不安を抱いたが、すぐに、忘れていた現実と直面する事になった。サロンに誘った友人たちから連絡が来たのだ。
「恥ずかしい話ですが、会社が潰れて自分のことしか考えていなかったんです。友達から、エステが潰れたけど返金はあるのか、とメッセージがきました。とたんに、目の前が真っ暗になり、自分がやってきたことが、本当に走馬灯のように頭をよぎりました」(脱毛サロンで働いていた女性)