2024年12月、安倍昭恵氏は渡米しトランプと面会。旧交を温めた(時事通信フォト)

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労働者の味方は、共和党、民主党、どっちだ?

 すでに本連載のなかで指摘してきたことだが、共和党とは南北戦争(1861〜1865)前夜に、反奴隷制の自由主義を掲げ、北部の商工業者などを主要な支持者として設立された政党である。よって伝統的に「小さな政府」路線をとり、経済政策としては自由競争を重視する態度を打ち出してきたので、その支持層には資本家などが多かった。

 一方で民主党は、そういう共和党への対抗の意味もあって、南北戦争以後は労働組合を伝統的な支持基盤としてきた。そういう流れから労働者の権益保護を打ち出す政策は、自然と党を「大きな政府」路線にいざなった。そこから特に20世紀以降、民主党は社会民主主義的な路線をも標榜するようになり、現在のようなリベラル色の非常に強い党としての姿が完成したのである。しかしそれが今、さまざまなところから批判されているように、民主党はリベラル色を強めた結果に都市インテリへ過度な迎合を見せるような政策的態度が目立ち始め、一般的な労働者たちの支持を徐々に失っていった。

 2016年に共和党から出馬して大統領となったドナルド・トランプとは、まさにそうした民主党の取りこぼした“地方の貧しい労働者”たちに、「忘れられた人々だ」と言って同情するポーズをとり、彼らの支持を集めて選挙に勝った人間である。2020年の大統領選では敗れたが、2024年の大統領選では見事にカムバック。そして各種のデータからも、全米の労働者たちは今回かつてなくトランプに、すなわち共和党に投票していることが明らかになっている。トランプという政治家の特徴を一つ述べれば、それはすなわち共和党という政党を「労働者のための党」に変貌させようとしている人物なのである。

 米国史上最も熱い選挙戦とも呼ばれた昨年の大統領選は終結したが、アメリカの政治家たちにホッとしているヒマはない。米連邦下院議員の任期は2年しかなく、次の選挙はもう来年の2026年だ。つまり4年に1度の大統領選の真ん中にはこの下院議員選が挟まるため、その選挙のことを「中間選挙」と呼び、実際にその勝敗は次期大統領選にかなり大きな影響をおよぼす。

 今の民主党が都市インテリや急進的リベラルに過度に肩入れしすぎた結果、昨年の大統領選を落としたという見方はすでに広く共有されているもので、バイデンにとり“民主党の古参政治家”として党から離れていった労働者たちに何かを訴えることは、必須の取り組みだったといっていい。だからこそ彼は大統領退任の直前に、USスチールの買収にあえて「ノー」を言った可能性は高い。

 もちろん、このUSスチールの買収話というのは、日米それぞれの超大企業の経済行為であり、そこには経済問題のみならず、安全保障の視点などなど、さまざまな要素が複雑に絡んでいる。よって何か一つのファクターだけで語れる問題でもない。しかし「アメリカにおける労働者の票」というものをめぐってこの国の二大政党が、経済専門家の視点を顧みることすらなく、“ポピュリズム”的な態度を見せていることも、また事実なのだ。

※『ビッグコミックオリジナル』(小社刊)1月20日号より一部改稿

◆小川寛大(おがわ・かんだい)/ジャーナリスト。1979年熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。2015年、季刊誌『宗教問題』編集長に。2011年より〈全日本南北戦争フォーラム〉事務局長も務め、「人類史上最も偉い人はリンカーン!」が持論。著書に『池田大作と創価学会』(文藝春秋)、『南北戦争』(中央公論新社)、近刊『南北戦争英雄伝 分断のアメリカを戦った男たち』(中公新書ラクレ)など。

メラニア・トランプ夫人。ファーストレディだ

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