「日本製鉄によるUSスチールの買収を阻止する」。第二次トランプ政権始動直前、敗れたバイデン前大統領は、突然、そう表明した。なぜこのタイミングで──誰しもがそう思ったこの大きなニュース。その背景には、昨秋の大統領選挙で事前の予測を裏切り、大敗を喫した民主党が抱える“構造的問題”があった。いまさら聞けない常識から、知っていれば“通ぶれる”ネタなどをわかりやすく解説する『ビッグコミックオリジナル』で好評連載中のジャーナリスト小川寛大氏による『アメリカ大統領選を10倍面白く読む!』を公開する。
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製造業関係の職業に就いている読者のなかには、何とも落ち着かない正月休みを過ごした向きもあったのではないか。
今年1月3日、その退任まであと十数日というタイミングで、アメリカ大統領のジョー・バイデンは大きな決断を下した。アメリカを代表する鉄鋼メーカー・USスチールが日本企業の日本製鉄に身売りする方向で話し合いを進めていたことに関し、アメリカ合衆国政府として、その企業買収を阻止すると発表したのだ。
この話はすでに大きな経済ニュースとなってさまざまなメディアで解説もされているが、今一度簡単に振り返ってみよう。日本製鉄がUSスチールを買収したいとの意向を世に示したのは、2023年12月のこと。実はUSスチールは近年、経営不振にあえいでおり、同社として日本製鉄の傘下に入ることそれ自体は、決して不愉快な話でもなかった。実際それから現在に至るまで、いわゆる敵対的買収のような形で話が進められてきた形跡などもない。