──意外にも、きっかけは冷凍食品の春巻きですか。春巻きへの情熱は大人になってから再燃したんですね。
「当時、売れている構成作家は番組を10本くらい担当していました。得意分野を持っている人が多い中、自分には自信が持てるものが何もなかったんです。そんな時、恵比寿を歩いていたら町中華の春巻き定食を見つけました。
『春巻きって唐揚げや餃子のようにメインじゃなくても、こんなひっそりとした定食屋さんでメインとして頑張ってるんだ』と。春巻きにシンパシーを感じて勇気をもらったんです。自分もたとえ、王道じゃなくてもなにかやり方を変えて、春巻きみたいにメインをはれるんじゃないかと」
──そこから春巻きを食べ歩くようになって、初めて“ハルマキスト”というネーミングをつけたんですね。人生を変えるほどの春巻きの魅力とは何ですか?
「包容力です。すべてを包み込んでくれて、すべての料理を巻ける。安い具材でも何でもそのまま巻けば、春巻きの皮の中で蒸されて食材のうま味が最大限に出てきます。なにげない食材を抜群に引き立てて美味しくしてくれるんですよ。言わば、春巻きの皮は“食べられる調理器具”のようなものなんです。あ、でも水分量だけは気をつけてくださいね。皮が破れるんで」
──食べられる調理器具!? どういうことですか。
「春巻きの皮にソーセージとチーズを巻いて、油をほんの少しフライパンに垂らす。丸々揚げなくても、揚げ焼きみたいな感じでじっくり焼くだけで、おつまみにもなるご馳走です。あと、千切りキャベツにしらすをちょちょっとかけて、レモン汁をつけて巻くだけでも、めっちゃうまいんです。はんぺんと塩昆布、チーズとか、それだけでいいんです。水でといた小麦粉で皮をくっつける作業が手間と思われがちですが、巻いた端の部分をフライパン側につけて焼けば、自然と皮同士がくっつきます」