令和ロマンの2連覇で過去最高とも言われる盛り上がりを見せたM-1グランプリ。その裏で、沖縄芸人たちは「O-1グランプリ」の熱闘を繰り広げていた――。そこには、沖縄出身で「沖縄ネタ」と向き合う難しさや、全国区進出にあたってのハードルなど、沖縄芸人ならではの知られざる暗闘があった。ノンフィクションライターの中村計氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
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あまり知られていないが、沖縄は「お笑いの島」だ。地元のFECオフィスやオリジン、さらには吉本興業という3つの主要なお笑い系のタレント事務所が共存している。
沖縄にお笑い王国・吉本興業の芸人養成所であるNSCが開校したのは2011年のことだ。沖縄の芸能事務所は吉本の進出に震え上がったそうだが、それから10年以上経った今も、吉本は沖縄県内のいち事務所というポジションのままだ。沖縄は吉本に制圧されなかった唯一のエリアでもある。
歌、踊り、芝居など古くから芸能が盛んだった沖縄では、大阪や東京のお笑いの方程式だけでは解答が得られない何かがある。
4年のブランクを経て、昨年からまたO-1の舞台に戻ってきたベテランコンビ・ハンサムの仲座健太はその「何か」をこう語る。
「大阪、東京の芸人とのいちばんの違いは『沖縄でやっていく』って決めている人たちが多いということじゃないですか。モテたいとか、お金を稼ぎたいというのもあるとは思うんですけど、沖縄芸人の最大のモチベーションは何よりも自分の生まれ育ったこの場所の人たちに笑いを提供したい、っていうことなんですよ」
O−1をきっかけに大ブレイクしたコンビのうちの1つがハンサムだ。ハンサムは2017年、護得久栄昇(ごえく・えいしょう)という沖縄の尊大な年配者をイメージした沖縄民謡の師範役を創出し、優勝は逃したものの、王者を食うほどのインパクトを残した。