“事故物件”になる不動産は少なくない(イメージ)
“オバケ調査”──現実にそんな事業を生業とするのが、賃貸不動産管理会社に15年間勤めた児玉和俊氏が立ち上げた「株式会社カチモード」だ。事故物件を専門に、物理学・超心理学専攻の大学教授や、映像・音声分析の専門家らと手を組み、科学的アプローチで“オバケがいないこと”を証明するのが主な業務内容だ。
ただし、なかにはどうしても説明のつかない“異常現象”が発生する案件もあるという。
マンションオーナー・島崎さんが所有する部屋では、過去に50代の男性が縊死。以来、入居者がいても原因不明の「気配と視線」を理由に退去される事態が続いた。児玉氏は本当にオバケが出たら自社が借り上げるという条件のもと、“オバケ調査”として当該の部屋に一晩滞在することになるが──。
児玉氏の著書『告知事項あり。その事故物件で起きること』(イマジカインフォス)より、氏が実際に体験した“説明のつかない異常な出来事”のリアルをお届けする。(同書より一部抜粋して再構成)【前後編の後編。前編を読む】
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オバケ調査で何かが起こる時間帯は0時半から3時半に集中します。私はこの時間帯をコアタイムと呼んでいるのですが、この日は1時を過ぎても何も起きる様子はありませんでした。
「何かあるならそろそろだと思うけど、何も起きないな……」
心の声を実際の声として漏らしながら、コアタイム中のため油断をすることなく、静かに時間を過ごしていました。
そして、それは突然起こります。時計を見ると1時42分。私の左側後ろ部分に強烈な違和感が発生しました。人の気配と視線を感じます。私の背後はベランダです。そのため一瞬、ベランダに誰かがいるのかとも思いましたが、ここはマンションの4階。しかも深夜です。普通に考えれば、ベランダに入れるはずがありません。
それに、どう考えても距離的には室内に誰かがいるとしか思えません。左背後に気配と視線を感じつつ、内心は焦りながらも表面的には何食わぬ顔をして、定期数値調査書への記載を続けます。
「この気配と視線は気のせいか? 無視してれば消えるものなのだろうか」
心の中でいろいろと思いを巡らせながらも、結局は振り返ることを決意し、その決意が鈍ってしまう前にバッ!と身体ごと振り向きます。
左後ろには誰もいませんでした。また、振り向いた瞬間に気配も視線も消えました。
「誰もいないし、気配も視線も消えた。まさか人間がベランダにいることはないよな」
念のためにカーテンと掃き出し窓を開けてベランダを見渡しますが、当然誰もいません。きっと今の現象のことを、退去した入居者たちは言っていたんだろうな。と思いました。