「墓じまい」の際、遺骨の移転にはさまざまな選択肢がある
一方で、これらの法律の罰則は、必ずしも遺骨の放棄行為を抑制できているわけではありません。特に、1000円以下の罰金という軽微な罰則は、一人ひとりのモラルを問うようなレベルであり、抑止力としてしっかりと機能しているとは言い難いです。遺骨の放棄という行為が、殺人や窃盗のような重大な犯罪とは性質が異なるため、法定刑が軽くなっていることが要因の一つと考えられるでしょう」(遠藤教授)
今後もしサービスエリアや、コインロッカーなどに遺骨を捨てる人が増えた場合に、罰則などが厳しくなる可能性はあるのだろうか。
「可能性は0ではないと思いますが、社会のルールの作り方として、まず罰則を厳罰化すれば犯罪がなくなるというのは、少し違います。厳罰化しても、犯罪数は少なくならないでしょう」(遠藤教授)
経済事情とも根深く紐づく「無縁遺骨」
なぜ、罰則の厳罰化だけでは問題が解決しないのか。遠藤教授は、遺骨の放棄という行為が社会全体の価値観や構造と深く結びついていると指摘する。
「かつては、家族が故人の遺骨を供養することが当たり前でした。そもそも遺骨を捨てるなどという行為自体が、考えにくい社会だったのです。しかし現代社会では、核家族化や少子高齢化が進み、家族関係が希薄化しています。
結果として、遺骨の引き取り手がなく、無縁となるケースが増加しているのです。一概に“無縁遺骨”といいますが、では本当に親族がいないのかというと、“いる”ケースは少なくありません」(遠藤教授)
総務省の2023年の調査(「遺留金等に関する実態調査結果報告書」1741の市区町村と47都道府県を対象)によると、2018年4月から2021年10月までの3年半の間において、死亡時に引き取り手がなかった死者は約10万5000人にのぼる。約10万5000人の死者のうち、ほとんどを占める約10万3000人は身元が判明しているにも関わらず、引き取り手がいなかった死者である。