海洋散骨事業の展開も
「墓じまい」にも変化が…
墓じまいの際に、遺骨の処分に困る人も少なくない。納骨堂や永代供養墓への移転、散骨など、選択肢は様々あるが、経済的な負担や故人とのつながりに対する複雑な感情などが、決断を難しくしているケースもある。
この墓じまいについて、海洋散骨事業を展開する株式会社ハウスボートクラブは、2023年に「墓じまい」という言葉を知っている20歳以上の男女、871名を対象に墓じまいに関する意識調査を実施した。
本調査によると、墓じまいを検討する理由として、「子どもに迷惑をかけたくない」が最多の27%を占めた。この回答者のうち58.1%が65歳以上の高齢者だった。
一方、20代では「管理費などの費用が高額だから」という検討理由が目立ち、墓守りの長期的な経済的負担を懸念していることが明らかになった。このように、世代間で、墓じまいに対する意識に大きな差がみられる。
「人々の価値観や生活スタイルの変化に伴い、墓のあり方も多様化しています。特に、経済的な負担を軽減したいというニーズから、散骨など、ランニングコストのかからない埋葬方法を望む人は増えています」(同社代表取締役社長・赤羽真聡氏)
経済的に余裕のない人にとっては、葬儀費用や墓地の維持費が負担となるため、遺骨の適切な処分を諦めてしまうケースもあるようだ。こうした状況下では、罰則を厳しくするだけでは、遺骨の放棄という行為を根絶することは難しいのかもしれない。
行政も、この問題に対してさまざまな取り組みを行っている。例えば、一部の火葬場では遺骨の「焼き切り」を選択できるようになったり、自治体で無償の永代供養墓を整備したりするなど、遺骨の処分に関するさまざまなオプションが増えている。
ひとつ方法を間違えると犯罪にもなりえる、遺骨の処分。「家族の形」や「墓じまい」のあり方が多様化した今だからこそ、社会全体で真剣に向きべき問題なのかもしれない。
取材・文/宮崎澄子