ベトナム人による組織的な万引き事件で、拠点から押収品を運び出す警視庁の捜査員ら。2024年11月27日(時事通信フォト)
法律に「万引き」という言葉はなく、窃盗という犯罪でしかない。店に陳列されているものを客のふりをして盗み取ることを万引き、と呼ぶ習慣は江戸時代からあり、「間引き」が転じた言葉であるなど語源も諸説あるが、その言葉には、子供が駄菓子をポケットに入れて盗んだ、というような金額も規模も小さいイメージが強いため、現実の犯罪と乖離した印象をうえつけてしまいがちだ。ライターの宮添優氏が、外国人の窃盗被害に悩むドラッグストア関係者たちの苦悩をレポートする。
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「ふざけるなと言いたい。万引きなんかではない、あれは外国人の窃盗団なんですよ。万引きなんて言葉を使うから、我々の苦境がはっきりと伝わらない。記事にするにしても、連中が窃盗団であることは明記してもらいたいと強く思います」
冷静だが、怒気のこもった低い声で筆者の取材に答えるのは、主に西日本エリアに展開するドラッグストアチェーン店の男性幹部。警察庁が先日、近年増え続ける、来日外国人によるドラッグストアでの「万引き」被害についての分析を発表し、業界団体へ防犯対策を徹底するように申し入れを行ったと報道された。その分析によると、2021年から2023年まで、外国人による万引き1件あたりの被害額が約7万8千円であることがわかったのだ。日本人による万引き1件あたりの被害額はおよそ1万円だったため、外国人による万引きは、その約8倍にまで膨れ上がる、というデータだ。
「もちろん、日本人の万引きも許せないし、1万円も商品を盗まれたら、ドラッグストアみたいな小売店は立ちゆかなくなる。それが平均で8万円ですから、もはや万引きなどというレベルではなく完全な窃盗。しかも、外国人は集団でやってくる窃盗団、もしくは強盗団なんですよ」
外国人「窃盗ツアー」がやってくる
この男性幹部が憤るのも無理はない。彼が勤務するグループでは、複数犯による店舗での万引き、窃盗被害が多発しており、この数年は特に悪質だという。バックヤードなどに無断で入ってくる外国人と鉢合わせたり、その直後に、飲料や紙おむつなど段ボール十数箱分を盗まれるような危険な状況に陥っている。単独犯ではなく、集団でやってきて窃盗をはたらくのだ。
「買い物をする雰囲気とはちょっと違う外国人客の集団がやってきたのを見て、現場の責任者は注意をしていたと言います。彼らはこそこそしたり、特に隠れるようなこともせず、本当に堂々と商品を持って行く。中には、パートの女性従業員が見ている目の前で、盗品を車に積み込む例もあった。注意でもしたら、暴力を受けたり連れ去られたり、どんな怖い思いをするかわからないので、見ないふりをするか、そこから逃げるしかない」(ドラッグストア店幹部)