水原一平の父が大谷への本音を告白した
ドジャース・大谷翔平(30)の口座から約26億円を不正送金したとして、銀行詐欺罪などに問われていた元専属通訳・水原一平被告(40)。ついに量刑が言い渡されたが、なぜこのような事件が起きたのか、謎に包まれた部分は多く残る。水原被告は幼い頃、父親とともに米国に渡り、後に通訳となった。その父親が、息子と「翔平」の関係について重い口を開いた。ノンフィクションライター・水谷竹秀氏がレポートする。(文中敬称略)【全3回の第1回】
「家に来たよね?」
夜の薄暗い駐車場に、黒いTシャツに黒いパンツ姿の男性が現われた。壁際に停まっている車に向かって歩いてきたが、私の姿を見るなり、やや急ぎ足になった。
「すみません」
そう呼びかけるも男性はそのまま運転席のドアを開け、車に乗り込んだ。窓ガラス越しに話しかけながら、こちらの身分を明かした。
「はじめまして。お手紙だけでも受け取っていただけますか?」
運転席に座っているのは、水原一平の父、英政(65)である。
それは昨年10月半ば、米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊でのことだった。居酒屋での勤務を終えた英政に、私は接触を試みた。「はじめまして」のつもりだったが、間もなく窓ガラスが開くと、英政から意外な言葉が返ってきた。
「あなた、ニューポートビーチの家に来たよね? あん中に、俺たち全員いたんだよ。だから見てるし、あなたのこと知ってるの。だけど出ていく必要もないし。何なの?」
英政は私を睨みつけるように声を荒らげ、私の背筋は凍りついた。
米現地時間2月6日、カリフォルニア州サンタアナの連邦地裁で行なわれた公判で、禁錮4年9か月、賠償金約26億円の支払いを言い渡された水原。“相棒”の大谷翔平と一緒に移籍したばかりのドジャースを電撃解雇されたのは、昨年3月20日だった。
今思えばその前日、韓国・ソウルで私が見た水原の姿は、その前兆だったのかもしれない。ドジャースの開幕戦に向かう大谷の後ろにはいつものように水原がいたが、大谷がバスに乗り込んだ後、なぜか水原だけがロビーに残って誰かと電話をしていたのが印象に残っていた。その水原が違法賭博に関与し、大谷の口座から大金を盗んでいたというニュースが飛び込んだのは、翌日だった。
私は間もなく、その後「行方不明」とされていた水原の動向を探るため、居住地であるロスへ飛んだ。いくつかの情報を頼りに、大谷とともに住んでいたとされるニューポートビーチの高級マンションを訪れた。