羽がむしられた鳥の様子
「タクシー運転手であることは、男の過去の書き込みからも簡単に推察できました。また、とあるアジアの国を賞賛するような投稿があったので、外国人かもしれないとも思っていたのですが、逮捕された男は日本人としか思えない名前でした。Xで男の行為を非難する投稿をしていた私の所にも早くから新聞社やテレビ局から連絡があり、情報提供をしました。結果的に男が逮捕されて本当によかったですが、なぜ半年もの間、放置されたのか。その間、救えた鳥の命もあったのではないか。疑問は消えません」(鳥好きの会社員女性)
容疑者の男がXへ問題の投稿をするようになって間もなく、その内容にショックを受けた鳥好きの有志のSNSユーザー同士で連絡を取り合い、警察やSNS事業者へ何度も通報や情報提供を行っていたという。それでも半年近く、虐待映像や画像は投稿され続けたことに悔しい思いが残る。もっとも、逮捕に至るには、投稿内容が日本で実際に起きたことだという客観的な証拠が必要で、海外で撮影された映像や、生成AIなどで作られたものではないことを証明しなければならない。密室で作成され、投稿されている内容を違法なものと断定するには、一般人の我々が思っている以上に手間も時間も必要なのだ。
だが、捜査の難しさを鑑みても、前出の女性のように、なぜもっと早く取り締まってくれないのかと苛立つ人たちは少なくない。彼らの怒りの背景には、いまのSNSが抱える対処が難しい問題がある。
残酷な動画の「コンテンツ化」
近年、小鳥などの小動物の虐待映像が、特に中国や東南アジアなどで、再生回数の稼げる「コンテンツ化」しつつあると話すのは、ある動画プラットフォーム企業の担当者の男性だ。
「たとえば、人間はもちろん、犬や猫、大型のペットの虐待については、各SNS運営会社や動画プラットフォーム業者がかなり厳しく取り締まっています。しかし、小動物の場合、それがいわゆる”かわいがり”なのか虐待なのか、判別が難しい場合もある。その結果、投稿が放置されることもあり、結局、その間に映像が拡散されて再生回数が上がるので、虐待映像をあげたユーザーもエスカレートしやすい。逮捕された男があげた映像も、男が逮捕され、犯行内容が詳しく報道されたことで、逆に拡散が始まっているのです」(動画プラットフォーム企業の担当者)
残念ながら、SNSではこれまで、動物を虐待する動画がたびたびアップロードされ、バズってきた。たとえば中国では、動物虐待動画が再生回数を稼げると言われてきた。だが一方で、それを歓迎しないユーザーも多く、2023年には猫を虐待した末に焼き殺す様子などが投稿されたのをきっかけに、動物愛護を求める集会やデモが行われた。経済が絶好調とされたコロナ禍前の中国では「ペットブーム」が起きていたこともあり、SNS上には「猫の命を大切に」という書き込みが相次いだ。