ハトを虐待する男(時事通信)
センセーショナルな内容の投稿ほど、SNSでは注目を集め、閲覧数を稼ぎやすい。そしてビュー数が増えて注目されるということは、人をエスカレートさせやすい。SNSへの歪んだ依存からなのか、自分より弱い存在、小さな動物を虐待する様子をSNSへ投稿する人たちがいる。ライターの宮添優氏が、ハト虐待男逮捕へ警察ではない一般のSNSユーザーたちが果たした役割、一部のSNSでコンテンツ化している残酷な投稿問題についてレポートする。
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2025年2月6日、警視庁は野生のハトを捕獲し殺害したとして、神奈川県川崎市に住むタクシー運転手の男を逮捕した。実はこの逮捕の背景には、虐待を通報した鳥を愛する一般の人たちの独自調査が貢献していたと、事件を取材した全国紙社会部記者が振り返る。
「容疑者の男の犯行やXの投稿内容について、警察も相当早い時期から把握していました。しかし、どこに住んでいるどんな人物なのかをすぐに読み解くことは難しかった。SNS運営側に通報してアカウントが消えても、また別のアカウントを使って投稿を繰り返し、また一から捜査し直すことになりかねないので、対応が難しい。その間に警察へ100件を超える通報があったと言いますが、逮捕に至る大きなきっかけのひとつは、一部の鳥愛好家ユーザーの独自調査です」(全国紙社会部記者)
本来、事件性のある事案について、警察は民間人が勝手に調査するなど、首を突っ込まれることを極端に嫌う傾向がある。それは、捜査情報の漏洩や攪乱を防ぐためであり、もっともな理由だ。だが今回のケースでは、通報しても動く気配が伝わってこない捜査当局やSNS運営の姿勢に業を煮やした数人のユーザーが独自で捜査、検証を行ったことが、今回はポジティブな結果に繋がったというのだ。
「まず、男が投稿していた場所を特定し、付近のペットショップに電話をかけまくる”ローラー作戦”を実施。男が鳥を購入していた店舗を見つけ出し、様々な情報を入手して、遂には自宅まで特定。彼らが調べたことがすべてではありませんが、その結果がまとめられていたことも、当局の本格的な捜査に大きな影響を与えたと思います」(全国紙社会部記者)
こうしたユーザーたちの独自調査・検証では、男が「タクシー運転手」である可能性、また、外国人である可能性も指摘されていた。だが、逮捕された男はタクシー運転手ではあるものの、公表された名前は日本人として、よくあるような名前だった。容疑者の素性については思い込みや偏見による間違った情報も一部で流布はしていたが、ハト虐待男の逮捕へ至る顛末について、インコや文鳥などの小鳥を数羽飼っている、鳥愛好家でもある関東在住の会社員の女性(30代)が、自分も調査と通報をした体験を語る。