フィリピンの「ルフィ」「キム」らを指示役とする広域強盗のうち、2023年1月に東京都狛江市で発生した強盗致死事件において実行役として関わった野村広之被告(54)の裁判員裁判が東京地裁立川支部で開かれ、2月18日の判決公判で菅原暁裁判長は求刑通りの無期懲役を言い渡した。
この事件に関与した実行役は野村被告を含め4人。他の3人には昨年すでに一審判決が言い渡されており、いずれも控訴している。当時19歳の大学生で、本事件ほか1件に関与した中西一晟被告(21)には懲役23年。中西被告の友人であり、本事件ほか2件に関与した加藤臣吾被告(26)には無期懲役、本事件ほか5件に実行役リーダーとして関与した永田陸人被告(23)にも同様に無期懲役。対して、野村被告が関わった事件は、この1件のみ。にもかかわらず共犯と変わらぬ厳しい判断がなされたのには理由がある。
被害者の死に直結する“バールでの殴打”を行なったのが他ならぬ野村被告だったからだ。ところが法廷で被告はそれを認めず、バールでの殴打行為はおろか、事件での重要な行動は全て他の実行役によるものだと主張し、被告よりも二回りほど若い3人に全てをなすりつける姿勢を見せた。
なすりつけるだけではなく、1月22日の初公判罪状認否では“現場にいた”ことすら、認めることに時間がかかった。白髪混じりの坊主頭に紺色のジャージ姿の被告は証言台の前に立ち、マスクの奥から「公訴事実に関して、解釈できないのもありますが……解釈できない内容、ありますが、参加したことは認知として、存在するのであります。ですから、厳格な審理を願います!」と、こもった大声で述べ、うつむく。「事件に参加したことはあるということか」と裁判長に問われ、しぶしぶ答えた。
「人間なんで、記憶薄れてますけど、参加……認知として残ってますので、記憶があること述べていきたい」
だが野村被告の“記憶”は、他の3人の実行役とは全く異なっていた。