フィリピン・マニラ近郊にあるビクタン収容所
「相手の悲鳴など関係なくいきますね」
2023年1月19日の昼時、狛江市内の住宅に押し込み強盗し、90歳女性Aさんを死亡させた事件において、犯行グループは大きく「指示役」、「実行役」、車などを調達する「サポート役」などに分かれており、野村被告は「実行役」として事件に関わった。被告が全てを否認していたため、他の実行役3名をはじめ、捜査に関わった警察官が多数証人出廷して証言したほか、復元されたテレグラムの送受信データ、関係者の乗る車の位置情報や防犯カメラ映像など、あらゆる証拠が取り調べられ、被告が事件に関わったことがおのずと証明されていった。
冒頭陳述や証拠によれば、事件の「指示役」はテレグラムで「キム」「ミツハシ(旧ルフィ)」「シュガー」と名乗る3名。2023年に入り、指示役らが強盗の実行犯を募集すると、まず同年1月12日、永田・中西被告が参加を表明。16日には加藤・野村被告も参加を表明する。指示役「キム」はテレグラム上にグループトーク「水曜日ババア案件」を立ち上げ、4人の実行役を加えたうえで〈一軒家の地下室に数千万円の現金がある。宅配業者を装って入り、女性に暴力を振るって金を奪い逃げる〉案件である旨、送信する。ここで野村被告は「相手の悲鳴など関係なくいきますね」と送信し、やる気を見せた。
本来の決行日である1月18日の朝、野村被告は川口市の自宅から自身の愛車で合流場所の登戸へ向かう。昼過ぎ、4人は永田被告が運転する“逃走車”で移動。途中で“突撃車”に乗り換えたのち、下見を繰り返したが、状況的に突入困難であると判断し、断念した。
そして翌19日朝、野村被告は前日同様、自宅から登戸へ向かい、実行役らと合流してAさん宅へ。宅配業者役の中西・野村被告が段ボール箱を持ってインターフォンを鳴らし、応対のために玄関ドアを開けたAさんを野村被告がいきなり抱きかかえ、そのまま中へ突入。3人もそれに続きAさん宅に突入した。
〈ピンポンして「宅配です、印鑑かサインお願いします」で玄関に呼んで、ドアを完全に開けさせます。チェーンをこじ開けるのはやめてください。ドアが開いたらババアをボコして大丈夫です〉(指示役「キム」送信のテレグラムメッセージ)
実行役らは結束バンドでAさんを緊縛したのち、地下にあるという現金のありかを聞き出しながらAさんをバールで殴打し続けたが、聞き出すことができなかった。闇雲に現金を探すも、ついに発見できないまま、腕時計3つを奪って一旦住宅を離れる。ほどなくして現金を探し出すための“再突入”を目論み見張りを始めたが、野村被告はその途中で逃走した。