シジュウカラは「ジャージャー」という声を聞くと、木の枝を「ヘビ」に見間違えることから、シジュウカラは概念化された言葉を持っていることを明らかにした。シジュウカラに文法があることを証明する際は「ルー語」、タレントのルー大柴が使う、日本語・英語ごちゃまぜの言い回しを利用。シジュウカラの鳴き声の一部にコガラの声を置き換えても、シジュウカラはこれまで一度も聞いたことのない新しい文の意味を正しく理解できることを示した。
学部生時代の実験をまるまるやり直したり、気が遠くなる時間をかけて観察と実験をくりかえしたりする過程が、苦労話ではなく、楽しいこととして書かれている。
「1年のうち、長いと10カ月ぐらい軽井沢の森に滞在してシジュウカラと向き合っていました。彼らの世界を見ていると、もうね、毎日のように発見があって! 一つひとつの発見がパズルみたいに組み合わさって、大きな気づきを得たりする。面白くて、いつの間にか18年経っていた気がします」
『僕鳥』でも学会での講演でも、鈴木さんは研究対象であるシジュウカラに感謝をささげることを忘れない。
『僕鳥』は初めての単著だが、早くもベストセラーになっている。
「6年前から何度も執筆を依頼されていたんですが、その時はもうちょっと研究を続けたくてそのまま研究を続けて。『動物言語学』という新たな学問を作るべきだという結論にたどりついて、アカデミアだけでなく一般の人にも、鳥たちにこんな言語が、こんな豊かな世界があると知ってほしいと思っていた時に編集者からあらためて『僕鳥』の依頼をいただいたので、『書きます』と即答しました」