侍ジャパンの試合後の大谷と佐々木(佐々木のInstagramより)
佐々木を悩ませる米国ならではの環境
海を渡った佐々木の不調の原因は何か。それを読み解くカギとなるのが、チームメイトである大谷翔平(30)の発言だ。
2月13日のキャンプ初日、大谷は報道陣に対し、佐々木への助言としてこうコメントした。
「慣れない気候、乾燥してうまく投げられなかったりするけど、そこは慣れ」
この「乾燥」は大谷自身が渡米当初に抱えた悩みにも重なる。メジャーリーグ研究家の友成那智氏が語る。
「メジャー1年目の2018年、投手・大谷の難敵となったのが、キャンプ地・アリゾナの気候でした。時には湿度27%まで空気が乾燥するのでボールが滑ってしまう。マウンド上の大谷が丸めた手のひらに何度も息を吹きかけて指先を湿らせる様子が見られましたが、それでも投球の精度が高まらず打ち込まれるシーンが少なくなかった」
2018年のオープン戦2試合で大谷は防御率27.00。開幕後は好投も見せたが、6月に右肘を痛め、故障者リスト入り。「“滑りやすいメジャー公式球”の制御のための右肘への負担が一因と見られ、オフにはトミー・ジョン手術も受けた」(前出・メジャー担当デスク)のだ。
渡米前にNPBでシーズンを通して大活躍を見せていた大谷にとっても困難だっただけに、コンディション不良などで何度も離脱してきた佐々木にとってはより不安材料だろう。長期離脱のリスクにつながる話であり、投球の精度にも直結する。
元ロッテ投手でメジャー挑戦経験がある野球評論家・前田幸長氏も実体験を踏まえてこう語る。
「米国の特定の地域は日本とケタ違いに空気が乾燥しているうえ、メジャー公式球はパサパサしていて指にフィットせず滑りやすく、慣れるまで時間がかかる。最も困ったのがスライダー。指の腹が滑るので思うように球が曲がりませんでした」
友成氏は「佐々木が復活できるかはスライダーに懸かっている」と指摘する。
「メジャーは投手の平均球速が日本より5キロ速く、打者はストレートに滅法強い。佐々木がメジャーで成功するには、強打者をねじ伏せる球速の復活はもちろん、スライダーの制球力や質を高めてバッターをいなす力が欠かせない」