『セックスコンプライアンス』(扶桑社新書)著者の加藤博太郎さん
夫婦間の性加害も犯罪になりうる
一方で、これまでなら泣き寝入りせざるを得なかったような被害でも、声を上げられるようになった。さらには、その自覚はなくとも、現行法に照らし合わせれば「実は被害者だった」という事例も出てきそうだ。
「刑法改正によって大きく変わった点がもうひとつ。不同意性交等罪の条文に、“婚姻関係の有無にかかわらず”という言葉が加えられたことです。過去には“性行為に応じることは妻の務め”という誤解があり、警察は民事不介入のスタンスをとっていた夫婦間の性加害も犯罪になりうることが明文化されたのです」(加藤さん・以下同)
内閣府の2023年度「男女間における暴力に関する調査」によると、「夫から性的強要を受けたことがある」と回答した既婚女性は実に10.6%にのぼっている。これまでは闇に埋もれてきた夫婦間の性犯罪も、この明文化によって白日の下に晒されることが期待される。
「例えば夫から“セックスを拒むのは嫁失格”“離婚すればお前は路頭に迷い、子供にも会えなくなる”などと日頃から脅迫されて心理的に支配され、不本意な性交を継続させられているとすれば、それは立派な不同意性交でしょう。
さらに、夫から妻への日常的なドメスティックバイオレンス(DV)やモラルハラスメントの事実が確認されれば、夫は逮捕や起訴されて有罪になる確率は一層高くなります」
近年、避妊をしない性行為を強要して、妻に望まない妊娠を強いる「多産DV」が社会問題としてクローズアップされているが、その多くも不同意性交に該当する可能性が高そうだ。