ところで、現在フジテレビはフジ・メディア・ホールディングスの子会社だが、そもそものスタートは、ラジオ局の文化放送(1951年開局後、1956年から現社名)であった。その後、同じくラジオ局のニッポン放送(1954年開局)とフジテレビ(1959年開局)が設立され、これとは別に存在した産経新聞社が経営危機からグループ内に取り込まれ最終的にフジサンケイグループとなった。

 念のためだが強調しておきたいのは、フジ・メディア・ホールディングスの上に「親会社」としてフジサンケイグループがあり、フジ・メディア・ホールディングスはその傘下の「子会社」に過ぎないことだ。しかし、ニュースを見ていると、この事件の「黒幕」として取り沙汰されている人物の肩書は、「フジテレビジョン取締役相談役」とか「フジ・メディア・ホールディングス取締役相談役」など、子会社の肩書ばかりが出てくる。

 しかし、彼の最大の肩書(2025年3月時点)は、じつは以下のようなものである。

〈フジサンケイグループ(FUJISANKEI COMMUNICATIONS GROUP 略称 FCG 代表:日枝 久)は、78社、4法人、3美術館、約13,000名の従業員からなる日本最大級のメディア・コングロマリットです。〉
(FUJISANKEI COMMUNICATIONS GROUP公式ホームページより)

 ここで読者が感じる疑問は、なぜ彼が「マスコミの法皇」の地位を獲得できたかということだろうが、ここで一つ質問をしたい。あなたはこの稿の本題である「尼港事件」のことを知っていましたか? 「なぜ、いまさらそんなことを聞くのか」と思われましたか? では、この稿の冒頭になんと書いてあったか思い出してください。そう、「歴史はすべてつながっている」です。

 尼港事件は、「戦前の人間」ならそれこそ子供でも知っている大事件だった。しかし現在はほとんどの人が知らない。つまり、日本にはあきらかに報道や教育に大きな歪みが存在する。

 そもそもフジサンケイグループは、その歪みを修正するために設立されたのである。

(第1448回に続く)

【プロフィール】
井沢元彦(いざわ・もとひこ)/作家。1954年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。TBS報道局記者時代の1980年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞、歴史推理小説に独自の世界を拓く。本連載をまとめた『逆説の日本史』シリーズのほか、『天皇になろうとした将軍』『真・日本の歴史』など著書多数。現在は執筆活動以外にも活躍の場を広げ、YouTubeチャンネル「井沢元彦の逆説チャンネル」にて動画コンテンツも無料配信中。

※週刊ポスト2025年3月21日号

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