米国ではテスラ販売店への抗議活動、テスラそのものを拒否するよう呼びかける動きが高まっている(AFP=時事)
米ニューオーリンズのマルディグラといえば、ブラジル・リオのカーニバルと並んで世界で知られた謝肉祭のひとつだ。とくに、毎日のように行われるパレードは観光客にも人気で、観光客も一体となって興じる様子がSNSに現地から投稿されるのが常だった。ところが、今年はちょっと様子が違う。パレードにテスラのサイバートラックが通るたび見物客が盛大にブーイングし、パレードで配られるビーズを投げつけるなどしているのだ。テスラといえば、起業家でトランプ米大統領が設置した政府効率化省(DOGE)のトップを務めているイーロン・マスク氏がCEOをつとめる自動車メーカーだ。テスラの電気自動車は、世界の最先端で所持そのものがステータスになるほど米国の誇りとなっていたはずが、いったい何が起きているのか。ライターの宮添優氏が、成功者の証だったはずのテスラを手放す決意をした米国在住者に本音を聞いた。
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「もう乗れないです。同僚は、通りに駐車していたら、ミラーを折られ、車体にスプレーで落書きまでされたんですよ」
こう話すのは、世界屈指のIT企業が集まることで知られる 米・西海岸、サンノゼ地区在住の日本人男性(40代)。コロナ禍直前、男性は電気自動車メーカー・テスラのSUVタイプ「モデルX」を購入した。アメリカでは富裕層を中心に人気だが、男性が購入した当時、まだ日本国内ではテスラ所有は珍しかった。日本人のテスラオーナーとして愛車の写真や動画をSNSにアップしたところ、日本人だけでなく、台湾や中国、韓国や東南アジアからも「かっこいい」「早く我々の国でも見たい」など称賛のコメントが相次ぎ、男性は「最高に気分が良かった、買ってよかった」としみじみ感じたと言う。
しかし現在、自慢の愛車「モデルX」は自宅ガレージに眠ったまま。男性と妻が日常的に使う車は、セカンドカーとして使っていた米国製の大型SUVである。ちなみに、完全なガソリン車であり、米国でもガソリン価格がかつてないほどの上昇を見せる中、家計にも重い負担がのしかかっているのだと頭を抱える。それでも「テスラには乗れない」と項を垂れる。
トランプ大統領の「テスラ購入宣言」
電気自動車がまだ少数派で、さらにテスラ車は希少な存在となっている日本国内では大々的に報じられる機会も少なく、また日本国民の関心も低いが、米国では、トランプ大統領に近しいイーロン・マスク氏の会社「テスラ」の自動車に対する、大規模な「不買運動」が拡大しているのだという。民放キー局の外報部に所属する記者が解説する。