テスラ店舗前で行われた抗議活動のなかで、通りかかったテスラ車のオーナーにも、そのテスラ車を拒否するよう呼びかける(AFP=時事)
とはいえ、テスラ車は世界中で人気であり、まさに次世代の電気自動車の「代表格」だったのではなかったか。だから環境配慮に敏感なヨーロッパだけでなく、新し物好きな中国でもテスラは羨望の的だった。しかし、米国国内同様、海外でもテスラの売れ行きは落ち込んでいる。外報部記者が続ける。
「ヨーロッパでも、米国国内同様に、トランプ大統領やマスク氏の象徴とも言えるテスラ車は敬遠されているとも聞きます。ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、ロシア側に肩入れしているとも捉えられかねないトランプ新政権の態度を注意深く見ているのです。さらに、電気自動車大国である中国でも、実はテスラが売れていない」(外報部記者)
中国に住む中国人、日本人に話を聞くと、確かに中国国内を走る電気自動車のほとんどが中国製であり、テスラ車は「昔憧れた」との声が聞こえてくる。比較的富裕層が多いとされる中国・広東省在住の商社勤務の日本人男性(50代)がいう。
「別に中国の肩を持つわけではありませんよ。ただ、中国国内の電気自動車の方が最新だし、値段も安いんですね。テスラと同価格帯の中国製電気自動車は内装もより豪華。新し物好きな(中国の)国民性ですから、テスラなんか古臭い、という中国人の同僚もいました。私も中国製の電気自動車を買いましたが、テスラのように高額な車はいらないかなと思っています」(広東在住の日本人)
一方、いずれ人口規模で中国を追い抜くとみられているインドでは、テスラ車が歓迎されているという話も聞こえる。ただし、インドのタタ社などに代表される、激安インド製乗用車を購入する層が、金額がその数倍にはなるテスラ車に率先して乗り換えるとも思えない。ともなれば、テスラ車に未だある種の「憧れ」を抱き続けているであろう人々が今もいる国、例えば、日本や韓国がテスラの次の「行き先」になりうる。
日本国内から米国に輸出される鉄鋼製品などの重工業製品にも、高額な関税が課せられる見通しだと報じられている現在。まさかとは思うが、売れ残りのテスラ車が日本人に売りつけられる……ようなことがないよう祈るばかりだ。